小さな「社会保障」記事の超重要箇所
この記事をお読みの方には、現役世代の方もいらっしゃるでしょうし、もう第一線を引退されている方もいらっしゃると思います。その両方の方たちにとっても、財政事情が悪い中、日本の社会保障が大丈夫かというご心配があるのではないかと思います。
最近の日経新聞(2015年4月1日)に「公的年金給付額 13年度、50兆円突破」という小さな記事がありました。厚生年金や国民年金についての記事です(編集部注:5面左下隅、縦9cm横7cmの小スペースに載った約310字の原稿)。記事には、
「国民への公的年金の給付額が50.5兆円と前の年度より1.3%増えた。(略)年金をもらう人は3950万人と0.2%増えた」
とあります。年金受給者、年金給付額が増えているというものです。
▼昔と今、1年に生まれる子どもの数を知っているか
しかし、この記事をよく読むと、給付の原資となる収入に関して、
「現役世代の国民や企業から集めた保険料が31.1兆円と3%増えた」
「そのほか、国や地方の税負担で11.5兆円、年金積立金管理運用独立法人(GPIF)などの積立金の取り崩しで6.2兆円を賄った」
とあります(編集部注:約90字の記述)。
このことを深く考えることが重要です。
年金制度や医療制度は「世代間扶助」という名目で、現役世代の拠出金が高齢者世代への給付を賄うというやり方になっています。自分が現役時代に貯めたものを引退後もらうというものではなく、いわば「自転車操業」なのですが、人口ピラミッドが正常な状態なら、永続的にやっていける制度です。
しかし、高齢社会が進んでいる中で少子化が極端に進んでいる現状、現役世代の拠出だけでは制度を維持できなくなっているのです。定年を迎えた人が大半の「団塊世代」の方たちが1学年240万人程度いるのに対して、今年成人式を迎えた人は126万人です。これでも団塊ジュニアの子供たち(つまり団塊の世代の方たちの孫)が成人に達し始めたので昨年より5万人増えたのですが、実は、昨年に生まれた子供は100万人しかいません。
この先も成人を迎えて社会保障を支える側の人たちがどんどん減少していくのです。これでは「世代間扶助」は成り立ちません。