【3】「ツテを使って上と話をつけたがる」“アタマ越し”営業マン

テレビのビジネスドラマではよく、主人公が相手先の上層部に直談判して契約をとり、勝ち誇る場面が登場する。現実はどうか。日本ムーグの小南氏が話す。

日本ヒューレット・パッカード アウトソーシング購買部 企画担当マネージャー●<strong>赤岸和郎</strong>

日本ヒューレット・パッカード アウトソーシング購買部 企画担当マネージャー●赤岸和郎

「購買の窓口をすっ飛ばし、上層部や技術部と直に話を決めようとする方は、自分では仕事ができると思っているのでしょうが、購買から見ると大きな勘違いです。会社には決裁のルールがあります。それをすっ飛ばされると、調整のため余計な仕事が増えて本当に困ります。最近は内部統制の面からも問題があります。

われわれは購買の仕事にプライドをもっています。取引先の営業マンに対する感謝の気持ちも忘れません。でも、すっ飛ばす方は社内的には好成績をあげても、われわれの中では他の営業さんより抜きん出られない。感謝の念もない。つきあいは長続きしないでしょう」

購買ネットワーク会のもう一人の代表幹事、日本HP(ヒューレット・パッカード)アウトソーシング購買部の赤岸和郎氏もこう話す。

「先方の営業担当が昇進して部長とかになり、“HPの購買の誰それとは長いつきあいだから”と出てくる。今の営業担当の顔も潰すし、われわれも好感をもちません。若手を立てる動きをしていただいたほうが担当同士で信頼関係が深まります」仮に相手先の購買の窓口が経験の浅い若手であっても、正面から向き合う営業こそが真の実力のもち主ということだ。

【4】「いざとなると上司の力に頼る」“上司離れできない”営業マン

上司役の俳優・佐藤浩市が取引先に謝るのを見て、「今日の部長、頭下げすぎでした。でも、素敵でした」と美人部下がささやくトヨタマークXのCM。これもテレビの世界だけのようだ。

「本当に日々の仕事ができる人は上司なんか連れてきません。その上司も、“俺が出れば話がまとまる”と思い込んでいる人はかつて接待営業全盛だった時代に手柄をなした方が多い。今、われわれが営業担当とどのように信頼関係を構築しようとしているかわかっていません」

と日本ムーグの小南氏。日本HPの赤岸氏も「上司に来てもらえたからといってよい営業の評価にはならないし、むしろ逆効果」だという。

「特にトラブったとき、先方の上司が途中から“俺の顔に免じて”的に出てきた瞬間、営業担当に対する信頼は薄まります。何かのときに上司が出てくるとすると、営業担当との話がシビアになってきたとき、もうそろそろこの人を相手にしてもダメなのかと思ってしまう。上司が出てくると担当同士で信頼関係をつくるチャンスが失われる。だから上司の中に逃げないでほしいのです」

マークXの別のCMでは、「部下を思うのは大切だが君はやさしすぎる」と役員にいわれ、「俺は俺のやり方でいく」と佐藤浩市がつぶやく。そのやり方が上司離れできない営業マンを生む。