「学級通信を出して」はモンスター発言か?
3. その要求は、本当に子どものためか?
▼ケース2
「○○先生みたいに、学級通信を出してください」
前担任の○○先生は、若く熱心な先生で、学級通信を毎日発行しており、それで学級の様子がよくわかりました。しかし、今回のベテランの担任の先生は学級通信を出さない模様。
そこで、ある熱心な親が「(ベテランの)先生も毎日出してください。○○先生は、毎日出していましたよ? 子どもたちのためにやる気を出していただけないでしょうか」と伝えました。
さて、この要求の問題点はどこでしょう? ここまでの事例演習を振り返り、問題点を指摘してみてください。
要求のポイントを「子どもの困り感」と「正当な理由」の切り口で見ていきます。
親は大変熱心で「学級の様子を知りたい」という要求を持っています。そのこと自体は悪くありません。けれども、それに「子どもたちのために」という理由を後付けしていることで、問題をすり替えているような印象が残ります。言われた側としては、要求と理由がねじれているため、なぜそうすべきかやや納得がいきません。
また、この要求の仕方には、大きな問題点があります。
それは、前担任と比較し、現担任に同じような人物像とやり方を求めていることです(この比較による要求の仕方が、もしパートナーや仕事の仲間に対してだったらと考えたら、間違っていることがよくわかると思います)。
比較しないこと。個性を認めること。
通常、父兄の皆さんはわが子の個性に応じて、「○○して欲しい」と学校側に要求をすると思います。
そこで申し上げたいのは、子どもに個性があるように、教師の側にも個性があるということ。
「学級通信の発行」などは、個性発揮の手段のひとつです。
きめ細やかに相談に乗ってくれる先生、音楽で引っ張る先生、子どもと一緒に体を動かすのが得意な先生……。タイプと長所はいろいろです。それが、わが子と合う場合・合わない場合があります。
「前の先生は学級通信を出してくれたのに、今の先生は出してくれない」という批判を子どもが聞いた場合、教師を見る目が変わります。そのことでせっかく教師が何か指導しても、聞く耳を持たなくなることもある。それは結果的に、子どもにとって大きなマイナスになってしまいます。
ケース2の例でいけば、「最近、ウチの子が学級のことで悩んでいるような気がして心配」というような「子どもの困り感」から出発して、「心配だから学級の様子を伝えるようにして欲しい」というように要求すると、スムーズに伝わると思います。
「本当に子どものためになる」というのは、正当な要求の大きなポイントのひとつです。