うえやまとちさん
1954年、福岡市生まれ。講談社・週刊「モーニング」の新人賞で、料理が得意で家庭的な父親を主人公にした『クッキングパパ』が入賞。85年5月より連載が始まり、空前の大ヒットに。今年連載30周年を迎え、単行本は6月に132巻が刊行予定。講談社の最長連載漫画となる。「料理ができる男性はかっこいい」という時代の流れを先取りした作品でもある。おいしい料理を食べながら、家族や友人が幸せになる作風は、著者のほんわかした人柄がにじみ出ている。ほかの代表作は『大字・字・ばさら駐在所』など。
毎回『クッキングパパ』で取り上げる料理は、家族や友人、近所の知り合いなどから、最新の情報を教えてもらったり、実際にお店で食べたりして、自分の舌で感じたものの中から、決めています。
試作するために、店主にプロの味を「家庭で作るにはどうしたらいいですか?」と尋ねると、結構教えてくれたりするんです。「お店はこうだけど、家庭だったらこの缶詰を使えばいいよ」みたいに。
旅館に泊まって食べたものは、メニューを全部持って帰ってきて、写真と照らし合わせながら「どうやって作ったのかな?」と。外国に行ったら、「なんとか一般家庭に入らせてほしい」とガイドさんにお願いして、一食でもいいのでその国の家庭料理を食べさせてもらっています。とにかくいろいろなところにアンテナを巡らせてね。
掲載する料理が決まったら、いつも僕とスタッフ2人とで作ります。僕が料理しているところを全部、記録しながら撮影していき、レシピを起こしてもらいます。あのレシピページは、細かい文字を使うのでなるべく読みやすく、勢いのある文体にしてね。小学生の女の子も読むので、そのあたりも考えながら描いています。
料理を再現しながらあっという間に、ドンピシャの味にたどり着くこともあるし、3日も4日もできないことも。最終的には奥さんに食べてもらうんですよ。「何これ?」と言われたら、「はい、やり直し」に(笑)。一般のお母さんたちが作りやすくておいしくて、彼女たちの舌の代表じゃないとね。
47巻で登場する「ぼんちゃん」さんは、毎年、おいしい日本酒を求めて旅をされているこだわりの店で、入手困難なお酒も多い。88巻に登場する「いせや」さんは、フォーク歌手の故・高田渡さんの行きつけの店。よくここでご一緒したので、東京にいるときは行くようになりました。焼き鳥や刺身を食べながら長居しますね。
最近、「おにぎらず」の話をよく聞かれます。22巻で登場する料理で、海苔の上にごはん、具材をのせて、四方から折りたたむだけ。命名は僕ですが、奥さんが前から作っていた料理です。たくさんの方にいろいろ工夫して作っていただき、うれしいですね。『クッキングパパ』は連載30周年を迎えましたが、料理を作って漫画を描いていたらあっという間でした。今後も登場するキャラクターと対話しながら描いていきたいと思っています。