▼教えて! リンダ先生

Q.「グローバル化で意思決定が遅くなりました」

グローバル化によって世界の様々な人たちと一緒に仕事をしていると、意思決定が複雑になってきたと感じます。どうすればスムーズにできるでしょうか。

A.「全員一致でなくても進めるルールを作ろう」

グローバル化によって世界の様々な人たちが繋がれば、意思決定が複雑になり、企業の成長を阻害します。それを防ぐためにグローバル企業が実践しているのが「経営陣のスリム化」です。例えばユニリーバでは7人以上は増やさないと決めています。もうひとつ「意思決定のルール設定」も挙げられます。日本企業にも多く見られるのが、全員一致でないと決められないという風土です。多様な声を聞くだけではスピードが落ちてしまいます。全員一致でなくても、前に進めるルールづくりが大切です。

▽柳井氏が読者の悩みにアドバイス!

Q. 英語はどう勉強したらいいですか

A. もはや日本の国内市場は確実に縮小し、ビジネスチャンスは減っていく。英語ができないとどこも雇ってくれないという日はそう遠くないのかもしれません。しかし、それ以上に気になるのは、英語が話せないために、外国人と一緒に仕事をするとき、日本人が委縮してしまうことです。

我々の会社の例だと、日本人が出向いて、外国で現地の人と店舗運営をする――。すると日本人だけが残業をしているというケースが結構あるんですね。僕はこういうのは最悪だと思うんですよ。一緒に残業をやろうと伝えなければならない。きちんと経営者的な判断から残業の必要性を説明して、働くみんなに指示することができないとダメなんです。

ですから、英語が話せるようになることも重要ですが、自分の考えをまず、相手に理解してもらえるようなコミュニケーション能力を向上させることでしょう。文法などは二の次でいいから、相手とコミュニケーションできることが大事だということを忘れないでほしいですね。

Q. オススメの「ビジネス書」は

A. アメリカの通信会社ITTの最高経営者として58四半期連続増益を果たしたハロルド・ジェニーン氏の『プロフェッショナルマネジャー』(小社刊)です。

経営とは、目標設定をして、何をすべきかを逆算し、その目標達成するためにすべてを懸けることなんだと教えてくれたのです。

衝撃でした。

僕はそれまで、経営というのは何かをゼロから始めて1つ1つ形にしていくことだと考えていたからです。しかし、どんなに頑張って歩いても、方向が定まっていなければムダな努力かもしれないと、著者のジェニーン氏は教えてくれたのです。

この本を読めば、今すぐ自分がやるべきこと、自分の仕事の持つ意味が明確になります。

※本コラムはプレジデント2011年1月17日号「柳井正社長インタビュー」の抜粋・要旨です。

ロンドン・ビジネススクール教授、2013年ビジネス書大賞受賞 Lynda Gratton(リンダ・グラットン)
組織論、人材論の世界的権威。英タイムズ紙の「世界のトップビジネス思想家15人」に選ばれている。フィナンシャル・タイムズでは「今後10年で未来に最もインパクトを与えるビジネス理論家」と賞され、英エコノミスト誌の「仕事の未来を予測する識者トップ200人」の1人。

 
ファーストリテイリング会長兼社長 柳井 正(やない・ただし)
1949年、山口県生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、ジャスコ(現イオン)に入社。その後、実家の小郡商事に入社。84年広島市にユニクロ1号店開店。91年社名をファーストリテイリングに変更。2002年より代表取締役会長就任。05年より現職となる。
(溝上憲文=構成 大沢尚芳=撮影)
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