年俸制かどうかは残業代と関係ない
「プロ野球選手は年俸制だから、残業代なんてもらえるわけがないじゃないか」
そう考えている人は多いだろう。しかし実は、年俸制かどうかは残業代の有無と関係がない。労務問題に詳しい千葉博弁護士は、こう解説する。
「通常、賃金は各社の賃金表に従って自動的に決まっていきます。それに対して、企業と従業員が毎年、協議して賃金を決めるのが年俸制です。要は賃金の決め方の話であって、割増賃金発生の有無とは何の関係もありません」
プロ野球選手が残業代をもらえない理由はほかにある。
「プロ野球選手と球団の契約は、一律に労働契約とみなすことが困難です。たとえば何千万円から何億円ももらっているようなスター選手は、労働契約というより請負的な色彩が強いと考えられます。請負であれば、そもそも時間外労働という考え方がなく、残業代も発生しないことになります」(千葉弁護士)
では、年俸数百万円で、球団にいろいろと管理されている若手選手はどうか。その場合は選手の労働者性が強くなり、法定労働時間を超えて働けば時間外労働の割増賃金を請求することも可能だ。ただし、それは理論上の話であり、「立場の弱い選手は契約を更新してもらえないのではないかという危機感があり、時間外労働の主張は現実的に困難」(同)というのが実態だ。