激しい流れに飲み込まれずに生きぬく方法

【グラットン】どんな分野でも変化のスピードが加速する、そしてそれは止まることがありません。それだけ動きの激しい世紀に私たちは暮らしているのです。激しい流れに飲み込まれることなく企業や個人がこの時代を生き抜くにはレジリエンスが必要です。強い力を持って元の形状に戻る力を養っていかなくてはなりません。そのための方法として企業経営者が影響を及ぼせる領域を私は3つの同心円でイメージしています。最も内側の領域は社内です。真ん中の領域は地域社会、サプライチェーンです。サプライチェーンの末端まで責任を持てる体制をどうつくるか。最も外側の領域はグローバル社会です。企業、社会、NGOなど複数の利害関係者が協力してこそ困難な問題を解決していくことが可能です。企業はこの3つの領域でレジリエンスを高めていかなくてはなりません。

※本稿は2014年6月17日にファーストリテイリンググループ社内で行われた対談を編集部の責任において要約・再構成しました。

▼リンダ先生が解説! 未来を示す7つのカギ

[1]グローバル市場のバランス変化
労働人口は先進国では減少、新興国では増加すると見込まれる。これにともなって、イノベーションが生まれる場所も先進国から新興国へと変化している。
[2]人間と仕事が高度に繋がる
安価な通信手段はさらに普及し、世界中の有能な人材がグローバルな求人市場にアクセスする。同時に企業からも人材を探すことが可能になる。
[3]有能な人材の偏在
技術の進化でどこでも仕事ができるようになる一方、同じような才能や関心を持つ人々が一部の地域に集中するという一見矛盾した現象が起こる。
[4]労働の空洞化
技術革新による自動化により、ホワイトカラーの営業、事務、管理など、かつて若者が経験を積むための足掛かりとなっていた仕事は失われつつある。
[5]スキルギャップの拡大
先進国でも教育や能力開発に投資していない国では、若者が高度なスキルを要求される仕事に就くことが一層難しくなる。
[6]貧困と格差の広がり
貧困の問題は格差の問題でもある。格差は先進国、新興国でも広がりを見せている。さらに広がれば、社会の分裂や権力争いに拍車がかかる。
[7]超異常気象の到来
地球全体で気温が4.0~5.0度上昇するという予測がある。世界のGDPの5~20%が気候変動によって失われる可能性がある。

ロンドン・ビジネススクール教授、2013年ビジネス書大賞受賞
Lynda Gratton
(リンダ・グラットン)
組織論、人材論の世界的権威。英タイムズ紙の「世界のトップビジネス思想家15人」に選ばれている。フィナンシャル・タイムズでは「今後10年で未来に最もインパクトを与えるビジネス理論家」と賞され、英エコノミスト誌の「仕事の未来を予測する識者トップ200人」の1人。

ファーストリテイリング会長兼社長
柳井 正
(やない・ただし)
1949年、山口県生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、ジャスコ(現イオン)に入社。その後、実家の小郡商事に入社。84年広島市にユニクロ1号店開店。91年社名をファーストリテイリングに変更。2002年より代表取締役会長就任。05年より現職となる。
(溝上憲文=構成 大沢尚芳=撮影)
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