深刻化する日本のエネルギー問題
グローバル化は、私が社長に就任した直後から掲げている経営戦略の1つです。1990年代、日系自動車メーカーが海外での現地生産に相次いで移行した際、セーレンの自動車内装材事業も積極的に海外展開を進めていきました。その後、2010年代には、編立・加工・縫製の一貫生産体制の構築を目指して、衣料分野での海外現地生産も開始しました。世界での生産拠点は現在、アメリカ、タイ、ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコと世界各地域の22拠点に広がっています。
一連のグローバル展開の結果、セーレングループの約6000人の従業員のうち、約半数の3000人が海外子会社に所属し、営業利益の6割を海外で稼ぐまでになりました。ここにきてようやく、名実ともにグローバル企業になれたと思います。
少子高齢化による国内市場の縮小により、日本だけを市場にしていては先がありません。加えて、深刻化する日本のエネルギー問題が、海外シフトの背景にあります。世界は今、原子力発電がエネルギー供給の主流です。31カ国で429基の原子力発電が動き、建設中や計画中のものが181基あります。世界がこぞって「これからは原子力発電だ」というスタンスを打ち出すなかで、ドイツだけが脱原発を掲げています。日本に至っては、どちらに進もうとしているのかいまだに不透明なまま。世界の動きに逆行しているといってもいいでしょう。
ここで何が起きているのかというと、世界各国に比べて日本のエネルギーがコスト高になり、日本企業の競争力はどんどん失われていきます。グローバル化を推し進め、海外での生産比率を高めていかなければ、企業は生き残ることができません。
企業には海外へ転出するという選択肢があり、生き残りを模索できる道があります。けれども、日本という国にとってはゆゆしき事態です。自動車や家電のメーカーがこぞって海外転出した結果、いま円安がこれだけ進んでも、貿易赤字は解消されていません。日本という国そのものが競争力を失くし、国が滅びる方向に向かっているように私には思えます。それなのに誰もそのことに気づいていない。あるいは、気づいていたとしても、何の手も打っていない。大変ゆゆしき問題だと思います。