ヒストリー欄には、学歴・職歴を記入する。これは葬儀などで故人の経歴を紹介する際に、正確なところがわかるので便利である。だが、それだけではない効用がある。本田さんは言う。

「母は地元の女子高を卒業しているのですが、その時代のコメント欄に『この頃がいちばん幸せだった』と書かれていて、胸を突かれる思いがしました。娘の私には苦労ばかりに思えた母の人生にも、幸せな時代があったんだ。そう知ることができて本当によかった」

本田さんの母は、エンディングノートと並行して遺言書を書き残していた。それも公証役場で作成する正式な「公正証書遺言」だ。その中で本田さんを遺言執行者に指定してあったため、滞りなく手続きを行えた。そうでない場合は、少々厄介なことになりかねない。

「名義人が亡くなると、相続手続きが済むまで銀行口座は一時凍結されます。葬儀費用が引き出せず、支払いに困ることもあるほどです。だから、特に資産家ではなくても、遺言を残してもらうことが重要なのです」

【ANSWER】家系図、経歴をまとめると葬儀のとき役に立つ。

遺言相続コンサルタント 本田桂子
1969年、奈良市生まれ。法政大学卒。会計事務所に勤務後、FPとして独立。『明日のための「マイ・エンディングノート」』など著書多数。
 
(佐川幸治(人物)、永井 浩(書籍)=撮影)
【関連記事】
自分の人生を見つめ直す「終活」が静かなブーム
FP黒田尚子の幸せ「老親対応」入門
顧客満足93%! 葬儀業界に一石を投じた「イオンのお葬式」
年代別・やっておきたい相続・贈与対策
親に遺言を絶対書いてもらうべき9つのケース