2015年から相続税の対象者は大幅に増える見込みだ。親が一軒家を保有しているなら相続税がかかるかどうか、一度、確認しておいたほうがいい。早めに動けば、有効な対策も講じやすくなる。

【30代】二世帯住宅が相続で有利に

30代であれば、まずは贈与の特例などを利用して、上手に財産を引き継ぎ、将来の相続税の対象となる財産を減らしておくのが有効だ。

この年代はちょうど家の購入を考える時期だろう。子どもが家を買うとなれば「多少なりとも援助をしたい」というのが親心だ。とはいえ、親の財産で贅沢をするのは親も喜ばない。負担が少なくなった分、老後の蓄えに回すなど、親の好意に応える配慮も必要だ。

二世帯住宅という方法もある。これまで1階と2階が外階段のみでつながっているケースは小規模宅地等の特例の対象とならなかった。親と同居していると認められなかったのだ。これが14年からは認められることになった。二世帯住宅をためらっていた人も一度、検討する価値はある。

【40代】親は最大の味方。潔く援助を求める

親が70代であることが多いこの年代こそ、親子で相続の話がしやすい。80代ほど自分の死が目前に迫っていないから、気持ちに余裕があるからだ。

40代といえば、子どもの教育費負担が家計を圧迫する年代だ。年収が増えない今、潔く親に援助を願い出ることも重要だ。忘れてしまいがちだが、“親は世界で最大の味方”である。子どもが困っていると知れば、手を差し伸べたくなる。しかし、いきなり「金をくれ」では親の気持ちは動かない。実家に出かけ、現状報告をすることから始めよう。そのとき、配偶者や孫などは連れずに自分ひとりで行くのがポイント。援助を頼むというより親子のコミュニケーションをとることが重要だ。これにより親子の関係がよくなれば、将来の相続対策にもよい影響を及ぼすはずだ。

【50代】家系図を作り相続の話題を振る

自分が50代で親が80代ともなれば、相続対策は待ったなしの段階。だが、ストレートに相続の話を持ち出すのは禁物だ。親にしてみれば、自分の死が目前に迫っているだけに、できるだけ考えたくはない。

では、どうするのがよいか。家系図を作る方法がある。「自分も50代になったし、子どもに伝えるためにも○○家の家系図を作りたい」と持ちかけてはどうだろうか。親も喜んで協力してくれるはずだ。

その過程で「じいちゃんが亡くなったときはどんな感じだった?」「何か困ったことはなかった?」など、相続の話もしやすくなる。同時に父親がこれからどうしたいのか、希望も聞いてみるといい。自分に関心を寄せてくれる子どもに何かしてあげたいと思うのが親心。相続対策も考えてくれるに違いない。

税理士 天野 隆(あまの・たかし)
税理士法人レガシィ代表社員税理士。公認会計士、税理士。相続に特化したコンサルティングを手がける。近著に『親に何かあっても心配ない遺言の話』『大増税でもあわてない相続・贈与の話』(ともにソフトバンク新書)など。
(構成=向山 勇)
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