孤立していた変革リーダーがつながる

【神田】変革リーダーといわれている人たちは、多くて人口の7%くらいしかいません。一般的な企業だともっと少なくて2%か3%。どちらかというと社内ではあまり厚遇されてはいませんから、孤立しがちになります。しかし、彼ら同士がつながると大きな力になるんですね。

【野村】変革リーダーの人たちがつながり合うと、トップの意識も変わってきます。最近ちょっと不思議に感じたのは、シンクタンクやコンサルティング会社から研修の依頼などを受けるようになったことです。変革の導き手であるイノベーション・ファシリテーターがやっていることは、ある問題に対する問いをつくり直して、その関係者を集めて対話をして、みんなで行動をおこしていくということです。その対話の場のことをフューチャーセッションと呼んでいるわけです。私に聞かなくても、シンクタンクの人たちは日頃からそういうことをやっているはずだと思っていました。

神田昌典氏

【神田】それが意外に出来ていなかったというわけですね。

【野村】そうなんです。どういうことかと言うと、たとえば行政などのクライアントから仕事の依頼があったとき、たとえそのテーマが官公庁都合で偏ったものであったとしても「その問題設定は間違っているのではないですか?」と問い直すことはとても難しいのだそうです。そんなことをすると、ほかのシンクタンクに仕事を持って行かれてしまうんだそうです。

【神田】クライアントの提案を否定することにもなりかねないですからね。

【野村】どうもそうらしいのです。その問題提起は違うのではないか? 解決するためには別のステークホルダーを呼んで話をしなければならないのではないか? というある種の「ちゃぶ台返し」ができないと言うんです。中立性が求められるシンクタンクですらその状況なら、いまやあらゆる分野にイノベーション・ファシリテーターは必要とされているということです。