現代人の睡眠の質に悪影響を与えている要因に、吉田院長は夕飯の時間をあげる。

「ビジネスマンはランチから夕飯までの間隔が長すぎる。夕飯が異常に遅く、寝る間際に食べている人も少なくありません。血糖値が高い状態で朝を迎えても目は覚めない。朝、血糖値が下がり、糖の代わりに脂肪を分解してエネルギーにするときにできるケトン体が、脳を刺激することで目が覚めるというのがまっとうな目覚め方。夕食を早く食べ、寝る間際にはものを食べないというのは、ダイエットにいいだけでなく、脳にとっても大事なこと」(吉田院長)

寝る前に栄養満点の食事を摂るよりも、寝る3、4時間前に、具だくさんのコンビニおにぎりを食べるほうが、脳にはよいのだ。とはいえ、毎夕飯がコンビニおにぎりではさみしい。脳によいおかずは、やはり魚。

「最近、海外で発表された論文ですが、焼き魚、煮魚は海馬を大きくするという報告があります。認知機能低下予防に、魚と野菜中心の食事が効果を発するのはご存じのとおりです」(篠原教授)

加えて「適度な運動をすると仕事効率がよくなり、QOL(生活の質)も高くなるという報告もあります」と篠原教授は言う。

適度な運動というのも量の個人差は大きいが、種類としてはウオーキングやジョギング、水泳など有酸素運動が好ましい。運動も習慣化するのが一番。朝、顔を洗わないと気持ちが悪いように、週に2、3度、体を動かさないと気持ちが悪いと感じるようになればしめたもの。

入浴は交感神経を活発にしたい朝にシャワーを浴びるならやや熱めで。夜の風呂はやや低めの温度でリラックスする副交感神経に切り替える。帰宅するとテレビの前にゴロンとしてダラダラという人は、“玄関開けたらすぐに風呂”のクセをつけよう。

「帰宅したら風呂→食事→リラックス時間→睡眠の習慣をつけましょう。入浴で自律神経が穏やかになり、ぐっすり寝られます」(吉田院長)

諏訪東京理科大学教授 篠原菊紀
1960年、長野県生まれ。東京大学卒業後、東京理科大学諏訪短期大学助教授を経て、現職。脳計測器多チャンネルNIRSを使って、脳活動を調べている。『一生クビにならない脳』ほか著書多数。
 
本郷赤門前クリニック院長 吉田たかよし
1964年生まれ。東京大学大学院で生命工学を研究しながら国家公務員I種経済職試験に合格。NHKアナウンサー、代議士秘書を経て、医師免許取得。日本初の受験生専門心療内科クリニックを開設。
(遠藤成=撮影)
【関連記事】
退社時間を死守すれば、脳が冴えるよみがえる
無理な依頼はスルー、「6時間睡眠」を確保する
発想力が60%アップする「歩き方」とは
「朝食を抜くと健康に悪い」のは本当か?
朝活で統一・一貫性を保って脳の働きを活発化