子供が成人した時点で、親は管理していた子供の財産の収支を“計算”して明らかにする義務があるのだ。子供のお年玉を親の財布に入れていたら正しい収支は出せない。だから、「本人名義の口座を作るなり、子供の財産は分別管理しておきなさいというのがこの条文の趣旨なのでしょう」(同)。

子供の財産を株や債券など元本を失うリスクのあるものに運用する権限はないというのが通説的な考え方だという。せいぜい銀行に預金する程度。当然、利息は子供の財産に帰属することになる。

「お年玉収入」にも不景気の足音

「お年玉収入」にも不景気の足音

お年玉を毎年2万円ずつ銀行に貯金したとすれば20年で計40万円+利息。利息も含めてそっくり渡してあげるのが親心だが、法的には利息は養育費や財産の管理費用と相殺できる。元本についても、普通の家庭では、親は子供の養育費を負担しているから、お年玉を養育費に充てても管理権の濫用になることはない。子供が成人するまでにかかった養育費をお年玉貯金が上回るケースはほとんどありえないから、成年時にちゃんと計算するなら、子供から預かったお年玉は返さなくても構わないという結論になる。

「民法上、親は子供のために行動するという原理原則を守る限り、子供からお年玉を『返せ』とは言えない仕組みになっています。それだけ親権の効力、子供の養育に関する親の権利義務は強い。家庭内の問題に国や行政は立ち入らないのが原則。親に子供の養育を任せておけない場合にどこで線引きするか難しい。それが子供の虐待問題などにもつながっているんです」(同)

世知辛いご時世、お年玉を巡る攻防は激化しそうだが、親子関係を損なわぬようご注意を。

(ライヴ・アート=図版作成)