海外サイトは命令に従わせる実効策ナシ

海外のサイトに削除請求する場合は、英語あるいはその国の言語で要求することになる。しかも、削除請求しても無視されてしまうことが少なくない。私の経験でも、クライアントからの依頼で、検索で発見できたサイトすべてに写真の削除請求をしたものの、応じようとしない海外のサイトが残ってしまい、手の打ちようがなかったケースがあった。たとえ訴訟を起こしたとしても、海外サイトを日本の裁判所の命令に従わせる実効的な方法がないのだ。

写真を公開される場合、本人のほか、配偶者や子供など家族、特に女性の写真が考えられる。公開されたのが猥褻性のある写真であれば「わいせつ電磁的記録媒体公然陳列罪」が、さらに撮影されたのが18歳未満の児童であれば、「児童ポルノ公然陳列罪」が成立する。いずれも同意を得て撮影した写真であっても違法だ。児童に対し「撮って送って」と頼んだ場合でも、頼んだ者は「児童ポルノ製造罪」に該当してしまうので注意が必要だ。

写真が必ずしも猥褻とはいえなくとも、「周囲の人たちから否定的な評価を受けるおそれ」があれば、刑法に定める名誉毀損に相当するほか、恋愛感情のもつれが原因だと「ストーカー規制法」違反となるケースも。

こうした法律の存在は、問題写真をネットで公表しようとする者に対する一定の抑止力にはなっているが、十分ではない。実際に多くの人が、ネットで写真をばらまかれ、苦しんでいる。それが原因で精神的・肉体的な病気を発症する人も少なくない。損害賠償を請求しても、認められる額は高くてせいぜい数百万円程度。被害者にとっては事件を広く知られるデメリットのほうが大きい。事実上「やられ損」というのが現状だ。

対策は、とにかく「やられないこと」が第一。女性の場合、裸の写真、性交時の写真などは絶対に撮らせないこと。若い頃うっかり写真を撮らせてしまい、後年になって苦しんでいる人が少なくない。読者にもし娘さんがいたら、「裸の写真は絶対に撮らせてはいけない」と、日ごろから注意を促しておくべきだろう。

弁護士 神田知宏(かんだ・ともひろ)
1966年、石川県生まれ。一橋大学法学部卒。IT系会社代表取締役としてSE、プログラミング、Webデザインに従事。2007年弁護士登録、現事務所へ。同年弁理士登録。
(構成=久保田正志 撮影=石橋素行)
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