ナースはPCやロボットでは代用できない

では、実際に採用する病院側は看護師にどんなスキルを求めているのだろうか。

全国に47医院を持ち、年間患者数66万人という業界大手「湘南美容外科」の人事担当者に聞いてみた。

「クリニック側としてまず確認するのは湘南美容外科の理念である『三方よし*』に共感できるかどうかです。その上で、看護師としての基本スキルや経歴を確認しています」

具体的には採用時に応募者のどんな点に着目するのか。

「オペではドクターの助手を務めるほか、ドクター指示のもとで看護師が対処するものも多く、しかも、予約 が小刻みで入っているためスピード感も求められます。手術の準備、ドクターのサポート、自ら行う対処を迅速かつ正確にチームワークで行えることが大切です」(同上)

スピード感とチームワーク。ビジネスマンが求められることと同じではないか。加えて……。

「さらに、求められるのが接遇スキル。お客さまの希望や悩みを理解しつつ、施術中は不安や痛みなどにもいち早く気づき、気持ちに寄り添い、親切・丁寧な対応も求められます。もちろん、美容 に関する専門知識も必要になってくるため、看護がメインの一般病院に比べると求められることは多くなりますね。専門知識・技術と接遇スキル。この両方が重要視される のが美容外科の看護師ともいえます。そして、この両方を兼ね備えた看護師はお客さまのリピーターも増える。これらが評価ポイントとなり処遇に反映されることになります」(同上)

同じ「看護師」でも、片や病気を治す仕事、片や美を追求する仕事。美容外科クリニックでは専門知識・技術に加え、患者(顧客)の気持ちに寄り添う接遇が期待され、顧客満足を高めることが報酬につながるようだ。

▼「景気に左右されず、全国で就職先に困らない」

マーケットは拡大の一途をたどり、さらなる成長過程にあると言われている美容医療業界。最近では男性の顧客も増えているのだとか。

「男性の場合、脱毛や汗を抑えるための腋下のボトックス注射などが人気です。女性の顧客もこれまで多かった20~30代からさらに上下の世代へと広がり、美容に興味を持ち、お金をかける方が増えています。女性に人気の施術は、脂肪吸引、豊胸術、二重術、ヒアルロン酸注射などの若返り治療、美肌レーザーなどのスキンケアです」(前出・人事担当者)

開院から15年経つ「湘南美容外科クリニック」では、前年比125%の売上をキープしているという。「プチ整形」という言葉がメディアを通して世間に広がり、社会的認知度の高まりが業界の成長を後押し。さらに、業界内でも金額と施術内容を明確にした点が奏功し、確実に需要は高まっているとのこと。医院数の規模と同様に給与水準も業界トップクラスともっぱらだ。

以前にも増して間口が広くなり、敷居が低くなった美容整形。そこで働く看護師のニーズも給与も上昇は必至だ。近年、大学の看護系学部は大変な人気で、入学志望者数もうなぎのぼりだという。「景気に左右されず、全国で就職先に困らない」のがその最大理由だ。

看護師は、患者(顧客)との距離が近く、相手の気持ちに寄り添う仕事が多いので、コンピュータやロボットでは代用できないと指摘する人もいる。それだけに、一流企業のビジネスマンをもしのぐ高収入のスーパー看護師が今後増える可能性は高い。

*「三方よし」とは、買い手、売り手、世間(社会)のいずれもが良くなることを目指した近江商人の経営理念。同クリニックの経営理念は「全スタッフの物心両面の幸福を追求するとともにお客様に最高・最良の美容・健康・医療サービスを提供し社会に貢献すること」(ウェブより)とあった。

【関連記事】
今、転職すると給料が上がる人、下がる人
息子と娘に勧めたい「10年後のバラ色職種」
35歳から給料5割アップで転職できる人の条件
出身大学は人生にどれほど影響するか
「手に職系」で一生お金に困らない資格