フロント一人を残し全員が辞めた!

佐藤の経験は特別なものではない。大半の支配人が、就任当初は大なり小なり同じような困難にぶつかるという。東横インを代表する名支配人といわれる黒川久美子にしても、新人のときはそうだった。

2001年入社の黒川は今、小型店の「京都五条烏丸」支配人と1001室の大型店「中部国際空港本館」総支配人を兼務する。辣腕ならではの重い役割といえるだろう。

その黒川も、京都2号店である京都五条烏丸の支配人として採用された当初は、落ち着くまでの半年が「とにかく大変だった」と振り返る。春の花見シーズンに開業したこともあって、初日からホテルは超多忙。業務上の細かなつまずきが絶えず、耐えかねたスタッフがフロントの一人を残してみな辞めてしまうという事件にも遭遇した。

それでも黒川や佐藤はなぜ、頑張りとおせたのか。家族の支えがあったことに加え、「先輩支配人に相談できたことが大きい」というのが2人の実感だ。ふだんはそれぞれのホテルの運営に忙しいが、エリアごとの研修や全国レベルの会議で集まるとき、先輩支配人に悩みをぶつけるという。

きれい好き、節約上手だから

四半期に1度開かれる「全国支配人会議」の様子。国内外の全支配人のほか、本社役員、ホテルのオーナーなどが参加する。

3月25日、東京・高輪のホテル宴会場に黒川や佐藤を含む東横インの支配人たちが勢ぞろいした。四半期に一度開かれる「全国支配人会議」だ。会社からの営業報告や、支配人たちが組織する各種委員会の活動報告が主なメニュー。昼間の全体会やその後の懇親会、翌日の数値分析会議を通じて支配人たちは胸襟を開いて話し合う。

会場を訪れてすぐ気づくのは、支配人のほとんどが女性であることだ。東横インの全従業員に占める女性比率は85%。支配人だけに限ると、その比率はなんと96.6%に達する。