一時の不祥事を乗り越えビジネスホテル最大手が業績を伸ばしている。原動力は、女性支配人たちの工夫と頑張りだ。「女たちの会社」の知られざる内幕を紹介する。
※第1回はこちら(http://president.jp/articles/-/15490)
ホテル業界は伝統的に男社会
新横浜駅前本館・新館双方の支配人を務める山形京子。山形は大企業の役員秘書や、外資系建築資材メーカーの営業担当として鳴らしたキャリアウーマンだ。メーカー時代は、1件1億円単位の商談を次々にまとめる凄腕だった。
しかし、圧倒的な男社会の建設業界では、その凄腕が疎まれた。上野田原町駅の佐藤玲子にも「商社は男社会で、女性にはどうしても補助的な役割が求められる」という不満があった。彼女たちは、女性が存分に活躍できる舞台を求めていたのである。
その舞台を用意した創業者西田憲正の発想は、成り行きに近いとはいえ、天才的だったといえるだろう。
「一般に女性のほうが接客業に向いているのは事実です。ホテルも例外ではありません。ただ、ホテル業界は伝統的に男社会で、『支配人といえば男』という常識から抜け出せません。その点、電気設備工事が本業だった西田さんは、業界の小さな常識にとらわれることなく、積極的に女性を登用することができたのでしょう。今後は他のホテルでも女性の支配人が増えるのではないでしょうか」
ホテルコンサルタントの牧野知弘オラガHSC代表取締役は、東横インの女性重視経営をこう評価する。
女性重視の象徴ともいえる、東横インの全国支配人会議。その壇上に黒川久美子(「京都五条烏丸」支配人・「中部国際空港本館」総支配人)が押し出され、喝采を受ける一幕があった。委員会活動の一つである「稼働率向上実行委員会」で、よい結果を出したからだ。
稼働率とは、全客室のうち客が実際に利用している客室の比率をいう。実は、稼働率が基準を下回ったときに、支配人が再教育のため参加させられるのが稼働率向上実行委員会だ。本来は不名誉な委員会のはずである。
しかし、黒川の場合だけは事情が違った。「07年の開業以来、一度も稼働率向上実行委員会から抜けられなかった」という低迷続きの中部国際空港本館を総支配人として引き継ぎ、2年かけて体質改善を進めた結果、この3月に基準の稼働率を3カ月連続で上回ることができ、はじめて委員会から「卒業」することができたのだ。