危機感から創設された「私塾」への期待
教育は子供たちの選択肢の多様性を担保し、それぞれの潜在的資質の開花を支援するためのものでなければならない。私はそう信じています。
ですから、教育資源を階層格差に応じて傾斜配分するという今進められている仕組みはどうしても許容することができない。もう一度、学校教育の社会的使命は「成熟した市民の育成」であるという原点に立ち戻らねばならないと思います。
では、親たちにできることは何でしょうか。とりあえずはこのような流れに抗(あらが)う「オルタナティブ」(代替的)な教育機関を支えることだと思います。
私が主宰する「凱風館(がいふうかん)」を含めて、今、各地で無数の「私塾」が創設されています。小学生から社会人まで、対象も教える内容もさまざまですが、共通するのは日本の教育に対する危機感です。そして、営利目的の教育機関とはまったく違う、個人が身銭を切って手作りした教育機関が次々と立ち上げられている。
かつてなら大学院に残って教員になったはずの若い優秀な研究者たちまでもが次々と大学に背を向けて、自分の「私塾」を開いている。
まだメディアはそのような風潮に気づいていません。でも、私は日本の学校教育が「潮目の変化」を迎えていることをはっきり実感しています。
内田 樹
1950年生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学大学院博士課程中退。武道家。合気道凱風館師範(合気道7段)。神戸女学院大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論など。『街場の戦争論』など著書多数。2011年11月、神戸市内に武道と哲学のための学塾「凱風館」を開設。
1950年生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学大学院博士課程中退。武道家。合気道凱風館師範(合気道7段)。神戸女学院大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論など。『街場の戦争論』など著書多数。2011年11月、神戸市内に武道と哲学のための学塾「凱風館」を開設。
(構成=田端広英 撮影=森本真哉)