人に尽くすことを億劫がらない

またベテランの放送作家として活躍している50代の女性は、僕が「次号の婦人公論の特集タイトル、迷っているんだけど」などとメールすると、どんなに忙しくてもその日の夜か翌日には、率直な意見を長文のメールで送ってくれる。そのメールを書くには、どう少なく見積もっても、30分か40分はかかっているはずだ。彼女と僕はただの友達だし、アドバイスのお礼といっても、たまに一杯奢るくらいのことしかしていないのに、ここまでしてくれるのには頭が下がる。

こんなふうに相手のために自分の時間を提供し、尽くすことを億劫がらないのが、好かれる人の特徴だ。だからといって、彼女たちは見返りを期待しているわけではない。ギブ&テイクどころか、ギブ&ギブなのだ。だがある時点で必ず、いままでギブしてきたことの10倍くらいのテイクがどかんとやってくる。この醍醐味を知っているかどうかが、おそらく50代から先の人生において、圧倒的な差になるのだろう。これはアラフィフ女性に限らず、あらゆる年代の人や、男性にもあてはまる話である。

職場で必要とされるには、何か人より秀でた技術があれば十分。だが多くのサラリーマンは、ほとんどがドングリの背比べだろう。そうだとすれば、人間力の部分で勝負するしかない。とはいえ、何もマザー・テレサのように献身的な自己犠牲は必要ない。50代に求められる人間力は、そこまで崇高なものでなくともいいのだ。

「いま自分の目の前にいる人に、少しだけ自分の持ち時間を提供する」。これを習慣にするだけで、誰からも愛される素晴らしい人生が開けてくるはずである。

アラ50「モテモテ」の心得5カ条
【1】誰に対しても公正であるべし
【2】自分が話すより相手の話を聞くべし
【3】人の短所より長所を探すべし
【4】毎日30分、人のために時間を使うべし
【5】ギブ&ギブの心を持つべし

「婦人公論」編集長 三木哲男
1958年、兵庫県生まれ。東京学芸大学卒業。幅広い年代の女性たちに取材するとともに、職場では部下がすべて女性と、常に女性に囲まれている。その経験から得た女性に関する鋭い分析で、テレビのコメンテーターとしても活躍。
(長山清子=構成)
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