――25歳で接客コンサルタントとして独立。若いせいか、お客様に信頼してもらえません。
あなたはご自分のことがどれぐらいわかっていますか?
――えっ?
日本はまだ基本的には年功序列社会なので、40~50代の方の中には「20代の若者にアドバイスされたくない」と思う人もいるでしょう。テーマの問題もあります。マネジメントや人事がテーマなら、「20代では少し経験が足りない」と思われるでしょう。ITがテーマなら、若くてもいい意見が聞けそうですが。
――僕の場合は、どちらでもないですね……。
となると、信用されないのは「若さ」が原因かどうかを考えてみる必要がある。能力が不足していることはないですか?
――厳しいですね……。でも仕事の内容には自信がありますし、一応、結果も出していますよ。
あなたの仕事ぶりを実際に見たわけではないのでわかりません。でも自分の仕事に自信を持っていても、周囲から「君のその自信はいったいどこから湧いてくるんだ?」と思われている人も多いのですよ。
――……。
自分の評価と周囲の評価がずれている人は、結局、自分しか見ていないことが多い。僕はこれほど一所懸命やっている、私は凄い、というように。眼に自尊心の膜がかかっていて、外の世界が見えていない。自分を見れば見るほど、自分を誤解してしまう。でも、外の世界を見るとはじめて、自分のことが客観的に見えてきます。独立して仕事をしているわけですから、自分に自信を持たなければやっていけないのはわかります。でも一度、客観的に自分の能力について、分析してみてはどうですか?
――どうすればいいのでしょうか?
まず大事なのは、「人間が一番わからないのは自分だ」と知ることです。たとえば、自分の声一つ取ってみてもそうでしょう。カラオケで自分の声を録音して聞いてみてください。普段の声とまったく違いますよ。
次に、同業者の講演やセミナーを聞きに行くなどして他人を観察する。そして他人と客観的に比べて自分を評価するのです。自分を知るのは簡単ではありませんが、そうすることで正しい自己評価に少し近づくことができ、何が足りないかがわかってきます。
――出口さんは、ご自身のことがわかっているんですか?
もちろんわかりませんよ。昔「音痴ですね」と言われたので「そんなはずはない」と言い張ったら、「録音したのを聞いてみますか?」と言われ、聞いてみたら本当に音痴でした。
Answer:人間が一番わからないのは自分のことです
ライフネット生命保険会長兼CEO
1948年、三重県生まれ。京都大学卒。日本生命ロンドン現法社長などを経て2013年より現職。経済界屈指の読書家。