ワールドカップは、あきらめない

なぜ48歳にして、現役として元気にプレーできているのか。1つは、コンディショニングである。体力の衰えは隠せないが、ストイックなまでに節制し、体調管理に気を遣っている。専属トレーナーや調理師を含めた「チーム・カズ」を結成し、毎年恒例のグアム自主トレでは必ず、肉体改造にも取り組んできた。個人による「チームスタッフ」はサッカー界では珍しい。

若い時のブラジル留学の体験から、つらさの中にもサッカーを楽しもうとする姿勢は一貫している。サッカーは遊びなんだ。でも「自分が楽しむために最大の努力をしないといけない」と漏らしたことがある。

カズ・ダンスでもわかる通り、ファンの視線はいつも意識している。その振る舞いから、「ファンのために」という思いが伝わってくる。派手な自己顕示も憎めない。これっぽっちもウソがないからだ。過剰な「スター主義」には賛同できないけれど、三浦カズを巡る騒ぎなら、おおむね微笑を呼ぶのだった。

もうひとつ、と旧知のサッカー記者は教えてくれた。「ワールドカップ(W杯)へのあこがれ」だった。98年フランスW杯の直前、最後の最後に三浦カズは日本代表から外された。たぶん、本音ではもうダメと感じているだろうが、三浦カズは「現役であるうちは夢へのチャレンジは捨てない」と言っているのである。

夢を抱き続けての全力プレー。それがキング・カズの輝きの素なのだろう。

松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。
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