「政治・宗教・野球」VS「出身地・趣味・天気」

するどい教養でニュースに潜む黒幕を探る(写真=時事通信フォト)

例えば、初対面で相手に取り上げるべきでない話題として、古くからいわれているのは「政治」「宗教」そして「野球」だ。名刺を交換した直後に、「選挙はどの党に投票しましたか?」「原発政策に賛成ですか、反対ですか」「あなたの宗教は何ですか?」「巨人は好きですか? 嫌いですか?」などと話し始めたら、その場で空気は凍り付き、決定的な対立がもたらされかねない。仕事相手であればそれで取引が取りやめになる危険性もある。

だから、多くの人が大人の知恵として、出身地、趣味、天気といった話題に逃げるのである。しかし、それで相手に強い印象を与えることができるだろうか。相手の懐に潜り込めるだろうか。

相手から強い関心を寄せてもらう話題はやはり「政治」「宗教」「野球」に限るのである。欧州では野球のところを「サッカー」に置き換えればよいだろう。リスクを取らなければ、大きな成果は得られない。政治も宗教も野球も、話し方、切り口次第では、対立を生むことなく、逆に共感を得ることができる。例を挙げる。以下のニュース記事から話題を膨らますには、どうすればいいか。

プロ野球読売巨人軍終身名誉監督の長嶋茂雄氏(77)と、巨人と米大リーグ・ヤンキースなどで活躍し、昨年末に引退表明した松井秀喜氏(38)の国民栄誉賞表彰式が、東京ドームで行われた。国民栄誉賞の表彰式が首相官邸以外の場所で行われるのは初めて。表彰式に先立って松井氏の引退セレモニーも行われ、「これからも僕の心の中には、ジャイアンツが存在し続けます。いつか皆さまにお会いできることを夢見て、新たに出発します」と語った。表彰式は巨人―広島戦の試合前に行われ、賞状を授与した安倍首相は「文句なしの国民栄誉賞。2人の明るさこそが私たちの求めているもの」と祝辞を述べた(2013年5月6日付 読売新聞東京版 朝刊)

政治的教養のある人であれば、ある人物の名前が浮かぶはずだ。

そう、渡辺恒雄・読売新聞グループ本社代表取締役会長・主筆のことだ。この国民栄誉賞のダブル受賞は渡辺氏の大きな影響力があったと想像した人が多いはずだ。そこに言及できれば、あなたの印象はグッと変わるだろう。

拙著『ひみつの教養』(プレジデント社)では、私から読者に、教養を鍛えるクイズを出題している。全部で24問。すべてを解けるようになれば、本物のエリートと対等に渡り合えると私が保証する。

写真注釈:「独裁者」「新聞を私物化」という批判もどこ吹く風のナベツネこと、渡辺恒雄氏。スポーツ紙や週刊誌で「ナベツネ、吠えた」の見出しが「俺は犬ではない」とお気に召しておらず、読売新聞系スポーツ紙では、「渡辺恒雄氏、大激怒」等の配慮された文言になるという(編集部注)。

(写真=時事通信フォト)
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