理性を麻痺させる脳のメカニズム
こんな出来事があった。振り込め詐欺に騙されている母親が銀行員や警察が制止したにもかかわらず「私は親だから間違いなく本人だとわかる」と言いながら銀行で大金を振り込んでしまったのだ。ここに人が騙されるメカニズムをみることができる。
人間は極度の不安や恐怖を感じると、脳が扁桃体優位の状態になる。つまり扁桃体がアドレナリン放出の信号を出し、ストレスを回避する行動を促すのだ。その結果「理性」を司る前頭前野の働きが弱くなり、冷静な判断ができなくなる。詐欺師は経験的にこの現象を知っており、それを巧みに利用して人を騙すことができるのだ。
また女性が男性より騙されやすいというのも紛れもない事実である。先の振り込め詐欺の事例もそうだが、騙されるのはほとんどが女性である。そして「占い」にはまりやすいのも女性である。
この理由は実にシンプルである。それは、騙される経験が少ない、ということだ。これは脳科学的な要因という以前に、文化的な要因が大きいといえる。女性のほとんどが男性よりも社会に出ることが少なく、男性よりも騙される経験が圧倒的に少ない。したがって、騙しの技術を持つ悪人にとって女性はいとも簡単に騙すことができる相手なのだ。
たとえば「占い」について言えば、よく当たる占い師でも、「当たる確率は25%だ」という。こんな確率では株でも大損してしまう。なのに、多くの女性は「当たる占い師」だと信じてしまう。なぜ信じるのか。それは、コールド・リーディング(信じさせる技術)などを使い、“当たったかのように思わせ”られているからだ。
冷静に考えれば「当たる占い師」など存在しないことはわかる。本当に当たるなら、株をやって大儲けしているはずである。儲かっていれば1時間1万円程度の「占い」の商売をしているはずがない。よく考えればわかるはずなのに、騙された経験値の低い女性は占い師の言いなりになってしまう。だから占いの商売は成り立っているといえる。