この歌詞が心に響いたのは、私がミドリムシに人生を懸けていたからです。ミドリムシは動物と植物の両方のよさを持ち、栄養食品として非常に優れています。これを食品にしたら、世界から栄養失調の人はいなくなる。まさに私にとって花のような存在です。

ところが、事業を始めた当時は「ミドリムシなんて……」と言われて、周囲にはなかなか理解されなかった。そんなとき、この曲は私に響きました。

いままで気にしてきませんでしたが、なぜ私がこの歌詞を気に入っていたのか腑に落ちました。アドラーは、「暗い」のではなく「優しい」と言いました。これは、同じものを見ていても、見方を変えれば価値が変わるということです。

そして「どのような見方をするのかは自分で決めることであり、他の人と見方が違うからといって嘆く必要はない」というメッセージも含まれています。私は同じメッセージを歌詞に見出していたのです。

最後にあげたいのは、アドラー心理学の重要な概念の一つである「共同体感覚」を表した言葉、「判断に迷った時は、より大きな集団の利益を優先することだ」です。

他者を仲間と見なして、そこに自分の居場所を感じられる感覚のことで、この感覚を持つことが幸福感につながります。これは私が社員に言っていることと近い。

私たちはお客様に安全・安心なものをお届けする必要がありますが、コンプライアンスだけで社員を縛るのは少し異なります。コンプライアンスのみを強調すれば、「法に違反しなければ何をやってもいいのか」という話になるだけだからです。

社員に安全・安心の意識を浸透させたければ、「仲間に言えるのか」「家族に言えるのか」「社会に言えるのか」と自問自答させることが大切です。仲間のためになっても、家族には胸を張って言えないことはあります。また家族には「生活のためだ」と言い訳できても、社会には同じことを言えないかもしれません。そうやってスクリーニングしたほうが、ずっと効果的です。

アドラーが、より大きな集団の利益を優先しろと言うのも、基本的に同じことでしょう。自分たちがいままでやってきたことが間違っていなかったという確認ができて、ホッとしています。