「信用」より「信頼」がベースとなる社会を実現したい

(上)『嫌われる勇気』岸見一郎、古賀史健著/ダイヤモンド社(下)『アルフレッド・アドラー人生に革命が起きる100の言葉』小倉 広著/ダイヤモンド社

今回読んだ2冊のうち、『アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉』の中で印象に残った言葉が3つあります。

その一つは、「『信用』するのではなく『信頼』するのだ」という言葉です。

私は起業する前、銀行に勤めていました。銀行でお金を貸すときに重視するのはクレディビリティ、つまり信用です。それに対して、何も条件をつけずに信じるのが信頼です。

いまは、人を疑うことがあたりまえの社会です。「子どもから電話がかかってきても、振り込め詐欺かもしれないから気をつけよう」とテレビ放送が流れる。注意喚起は必要かもしれませんが、人を疑うことを前提にした社会が、本当に成熟した社会といえるのか。私には、そう思えません。

信用で成り立つ資本主義社会の危うさは、みんな薄々気づいているはずです。実際、アメリカ型の資本主義はリーマンショックで破綻して、世界中の人が痛い目にあった。

残念ながら、強欲な資本主義に代わる新しい仕組みは、まだ具体的に見えてきていません。しかし、次の方向性はアドラーが示しています。つまり、信用の社会から、信頼の社会へ。将来はそのようにシフトしていってほしい。

もちろんいますぐ、信用ではなく信頼だけで会社を経営するのは無理です。代金は回収できないけど信頼しているからいくらでも売るよ、というのは経営ではありませんから。ただ、個人の信念で行う事業は、ある程度は信頼にもとづいてやっていくことが可能です。

私は今年4月から、バングラデシュの子どもたちの栄養失調をなくすため、粉末にしたミドリムシを給食に混ぜて食べさせるプログラムをスタートさせています。これは信用より信頼でできる。そうやってできるところから広げていけば、いずれ信頼がベースになる社会が実現されるのではないでしょうか。

2つ目の言葉は、「『暗い』のではなく『優しい』のだ。『のろま』ではなく『ていねい』なのだ。『失敗ばかり』ではなく『たくさんのチャレンジをしている』のだ」。

というのも、ある曲を思い出したからです。浜崎あゆみさんの「flower garden」という曲に、「ボクが絶望感じた場所に キミはきれいな花 見つけたりする」という歌詞が出てきます。