個人名を検索して出てくる知られたくない過去や不利益な情報が、人事や採用に影響を及ぼしたり、第三者に書き込まれた誹謗中傷で精神的苦痛を受けるケースが増えている。近年はSNSの普及に伴って、デマや虚偽の情報が拡散するスピードや範囲も上がり、重大な人権侵害となっている。
こうした被害に遭ったとき、どう対処すればよいのか。ネットの情報を完全に消し去るには、書き込まれた匿名の掲示板やブログ、SNSを逐一当たる必要がある。無数のミラー(コピー)サイトに書き込みが散在するネットの世界で、そのすべてを消すことは事実上不可能に近い。しかし、検索してもネガティブ情報が表示されなければ、元の情報に行き着くことは難しいので、問題の大半は解決する。
3月30日にヤフーが公表した「検索情報の削除に応じる際のガイドライン」は、そうした解決法の一つの形だろう。削除するか否か、要望にどう応えるかの基準を公表したもので、時代の要請にマッチした取り組みといえる。
ただ現場で削除に当たる法律家からは「ヤフーで対処しても、グーグルで検索すると出てくるのでは解決に至らない可能性が高い」(清水陽平弁護士)という声も。現在、国内の検索サイト市場はヤフーとグーグルでシェア9割。勢力は五分五分だが、世界市場ではグーグルの一人勝ちだ。しかもヤフーは2010年からグーグルの検索エンジンを採用している。「グーグルが表示しない措置を取ればそれがヤフーに反映されるから、グーグルに対処を依頼すればよい」(前出・清水氏)という。その依頼は、“削除ポリシー”一語の検索でトップに表示される「削除ポリシー」のページから行える。ただし、名誉毀損など多少の法的知識が必要だ。
問題はこうした報道に便乗し、「削除請け負います」などと宣伝し、困った会社や人に高額な月額料金を請求したり、できないことをできると称する業者の存在だ。すでに法的な対処や適切な手続きを踏めば、解決に繋がる時代になっている。今後、こうした悪質な業者の排除が急務だ。