たくさん頷くと財布の紐は緩くなる

女性は会話の中で男性客から「転職活動中で面接を受けている」という言葉を引き出し、「面接は、第一印象が大事」「自分に合ったスーツが面接の好印象を決める」ということに、頷かせている。

相手に肯定的な返事をさせながら、one by one(一つずつ)で話を積み上げて、「購入」という結論へ誘う。これは、質問に対して「はい」という同意をとりながら話を進める「イエスセット」の手法である。

これにより、契約への話を後戻りさせずに先に進められる。

この手法は、様々なビジネスの場で使えるが、ただ相手に頷かせるだけの行為では弱いこともある。

「はい」だけの答えに終始してしまうと、重要な契約をする際に「頷いた」「頷いていない」などという水掛け論になる恐れがあるからだ。そこで、相手にこちらの意図に沿った具体的な発言をさせる必要がある。

▼購入キャンセルを回避する手立て

先の事例でいえば、「仕事ができる人の条件って何だと思いますか?」と尋ねて、「決断力があって、意志を曲げないこと」という言葉を引き出している。

一貫した話の流れの中では、相手は「優柔不断では、面接は受からない」「人からできない男という評価を下されたくない」という思いを持つので、こちら側の意図した言葉を誘導しやすくなる。

それに重要な言葉を発すれば、自ずと責任が伴うので、相手はそれに沿った一貫した行動を強いられることになる。もし男性が購入後、一人冷静になり、衝動買いしたかもしれないという後悔の念から、やっぱり購入をやめようかと考えても「一度、物事を決めたら意志を曲げない」を公言しているゆえに、その思いを口にできなくなる。一度、出した結論は、容易には変えられないものだ。これは特にプライドの高い男性に有効な手立てである。

その他、一貫性の原理を使えば、他の関連した商品を売りやすくなるメリットもある。