今いるポジションによって、読むべき本は変わってくる。次なるステージに向かう階段を順調に上るためにも、現在の足場をしっかり固めるための指南書を手に取りたいものだ。
自らを過小評価してしまうために、せっかくの有能な人材が出世しない。そんな事例が男性より女性に多い、という事実を私は本で知りました。
アメリカ人発達心理学者の渾身の科学ノンフィクション『なぜ女は昇進を拒むのか』がそれです。生物学的な違い、脳のつくりの違い、育てられ方の違い。男女の性差が、仕事にいかに反映されるかを調べた本書のなかで「インポスター症候群」になる女性が多い、という分析結果がありました。
ある女性社員は努力して実績をあげたのに、それを自分の功績によるものだと思えない。曰く、私はラッキーだった。周囲のスタッフのおかげ。景気が追い風になった。成功の全要因をそうやって自分以外の「外部」に求める。結果的に昇進しても居心地の悪さを感じてしまう。インポスター(詐欺師、ペテン師の意)という名称が付けられているのはそのためです。この症候群になる人は、逆に何か失敗したときは、責任が自分にあると考えるそうです。
先進国のなかでも極端に女性管理職や役員が少ない日本においても同様に、「過小評価する女性」は多いのではないでしょうか。女性活躍推進を仕事のテーマにしている者として、また同じ女性として、非常に多くの示唆を与えてくれる1冊です。
元ヒューレット・パッカードのトップとして指揮をとったカーリー・フィオリーナさんの自叙伝『私はこうして受付からCEOになった』も女性の背中をそっと押してくれる本です。受付からスタートした、最初は野心もない「フツーのOL」だった彼女が、ビジネスウーマンとして、また妻・母として葛藤しながら信じる道を歩む。アメリカのエグゼクティブは寝ても覚めてもビジネス全開モード、一般人とは別次元というイメージがありますが、私たちと同じように、小さなことで落ち込んだり、傷ついたりといった等身大の姿を見て、これから出世を目指す女性もそうではない女性もきっと共感していただけるのではないでしょうか。
私は若い女性たちに人生で一度はキラキラ輝く「仕事に前のめり」の時期を過ごしてほしいと思っています。前2冊もその「前のめり」の価値を十分に教えてくれますが、元リクルートの太田彩子さんの『働く女性! リーダーになったら読む本』や私の『働く女性28歳からの仕事のルール』からも、思考のベクトルを変えて、先の見えないモヤモヤを抱えつつも、仕事を通じて人生のワクワクを得るための考え方やノウハウが紹介されています。
『この女ひとに賭けろ』は、かつて私が就寝前にエネルギー充填するために読んでいた漫画です。銀行の女性総合営業職が男社会を渡り歩き、最後はNY支店長となるストーリー。女・半沢直樹的な痛快な生き方は翌朝、元気で会社に行くためのパワーをくれます。