24時間考えぬけば閃きや意欲も出る
この1月、資生堂の社長として最初の正月を迎え、産休中や育休中の人も含めた国内外の全社員に年賀状を出した。100年先を展望した資生堂の「変革宣言」とともに、「必要なのは一人ひとりの大胆さと迅速さです。動き出す資生堂にどうか、あなたの力を貸してください」と呼びかけた。約4万7000人もいるから、名前入りの「こころざし読本」まではつくれない。でも、思いは同じだ。
街でも、電車の中でも、多くの日本人がスマホをいじくり続けている。斬新な情報に接し、いい刺激を受けているならいいが、周りの景色も人々の表情や動きも、みていない。ファッションの選択でも、ネット上のランキングや口コミ数など、最大公約数的なデータに支配されがちだ。そういう人から、創造的な発想は出てこない。「こんなものをつくりたい」という閃きや意欲こそが、大切だ。閃きや意欲は、日頃の強烈な問題意識がなければ、生まれない。
各種の調査で、資生堂の「企業好感度」は上昇しているのに、国内市場のシェアはじりじりと低下する。要は、商品力とマーケティング力が落ちていた。社員たちには、24時間、常にアンテナやセンサーを働かせ、多様化するニーズと向き合う力を鍛えてほしい。
そんな企業文化を根付かせるには、やっぱり手本が必要だ。昨年8月、「マーケティングアカデミー」を開講した。手本役を期待される上級コースの受講者は、マーケティング部門の管理職ら中堅幹部約100人。5つのグループに分け、各グループが延べ9日間のプログラムで学ぶ。若い担当者たちには、述べ8日間の基礎コースも設けた。マーケティング力を高めるのに、安易な近道はない。