不可解なコメント、不自然な答弁
当初は子どもたちの受動喫煙防止をするべきだとの話があり、通学路を禁煙ゾーンにしようとした。しかし、通学路がないため、市全域に網掛けしたというのだ。通学路がないことが本当だとしたら、そちらの方が由々しき問題ではないか。
そこで記者は3月13日、教育委員会学務課に足を運び確認すると、小学校5校、中学校4校の通学路の資料コピーを貰った。
「それぞれの校長が指定し、教育委員会が追認するというものです」(同課)
では、なぜ通学路を喫煙禁止区域に指定するのではなく市全域を禁煙の網掛けにしたのか、なぜ取材に対し誤解を招くような発言をしたのか。疑問は募るばかりだ。その答えを聞こうと担当部署に名刺を渡してきたが、担当課長からの連絡はなかった。
さらにもう一つ、不可思議な点がある。高橋市長就任後、各条例の策定や改正案、計画案などについてパブリックコメントを求めたのは計36件。約1カ月の募集期間を設けたが「意見の提出なし」は18件。実に半数が「意見なし」だった。一番多いもので「5名から意見あり」にしか過ぎない。
しかし、13日の市議会でパブコメについての質問に対し、「約400件集まっている」と回答した。明らかに不自然で、相反する利害関係者たちの“組織票”だとの見方がある。
地方自治にも関心を寄せる慶應義塾大学経済学部の金子勝教授は言う。
「受動喫煙の問題を規制しようとした場合、批判されにくい。だから、各自治体は“やりやすい条例”ということになります。しかし、販売店をはじめ、宿泊業や飲食業など規制によって大きく損失を招く恐れもあります。加えて、たばこは税収としても大きいものがある。財源として捉えた場合、ただ単に規制すればいいという問題ではない。だからこそ、広く市民の声を集めるべきです。どのような分煙にすればいいのか、喫煙所を多く造ってそれ以外は禁煙にするとか、または全面禁煙とかやり方は多数ある。それを無視して強引に進めようとするのは“不純な動機”と受け取られても仕方ない。強引な安倍晋三首相をマネしなくてもいいじゃないかと言いたい」
条例は、その地域に住む人たちのルールだ。決して“政争の具”にならないことを祈るばかりである。