当たり前だが、華僑も投資で失敗したり、間違った判断を下すこともある。

「でも、立ち直りが早いですね。時間は有限であり命であることがよくわかっていて、ネガティブなことを考えるのは時間の無駄、早く落ち込みから抜け出して平常心に戻って、また集中していこう、と考えます。高い結果を出すことに関しては、華僑のほうが強い気がします。日本人も集中力は高いですが、失敗すると立ち直りが遅い」(ユエン氏)

落ち込んだ状態からなかなか抜けられない人との差は、執着心にあるのでは……とユエン氏は言う。

「忍耐強い人は、一度立てた目標を何が何でも達成しようという意気込みを持っていると思うんですが、あまりに頑張るとそれが執着心になってしまう場合もあります。華僑の人たちは、なかなか結果が出ないと、場合によっては間違った方向に進んでいるかも、と考え、すぐに目標に対する執着を手放して、どんどん方針転換していく」

今いる場以外にも活躍の場を切り拓ける彼らの眼には、その場のみに執着する者が言う「最後までやり通す」という美徳はナンセンスに映る。

「その見切りのタイミングがすごく上手。ユダヤの方も同じだと思いますが、投資や新しいビジネスを始めるとき、事前の準備・調査は確かに入念に行います。しかし、例えば不動産なら『価格が35%上がったら売却』という具合に、ある程度の目標額を決めてしまうんです。さらに上がる可能性があったとしても、そこで一度切ってしまう。これを繰り返していく感覚です」(同)

望まぬことに時間を費やす“努力の罠”

時間そのものに振り回されず、ゆっくりとしたリズムで日々を送るのはユダヤ人も同じである。

「夫も含めた私の知己のユダヤ人の多くは、日本人のようなハードワーカーではありませんが、あくせくせず、非常にゆったりと日々を過ごしています。ピーター・ドラッカーが『細切れの時間をまとめよ』と言いましたが、彼らはそうしてまとめた時間に、稼ぐための仕組みや戦略の構築について本当に深く真剣に考えています。『緊急ではないが重要』な領域に、重点的に時間を割いている印象です」(星野陽子氏)