“時というものは、それぞれの人によって、それぞれの速さで走るものだ──”そんな古の格言を借りずとも、それは誰もが体感しているはず。人や時間に「隷属する」側に甘んじず、人や時間を「使いこなす」側に回るには、暦、カレンダーに囚われてはならないのだ。その生きた教科書である“彼ら”の哲学とその行動に、我々はとくと学ばねばならない。

※第1回はこちら(http://president.jp/articles/-/14715)

「自分の心理状態と時間は連動します」

華僑の人々も、時間に重きを置きつつも、決して隷属はしない。

「時は『金』なりと言いますが、華僑の方々は時間を『命』だと考えています。面会一つとっても、例えば一時間なら、その人の命の中の一時間を分けてもらっているのだ……と考えます」

そう語る真弓・ナタリー・ユエン氏は、マダム・ジュリーという香港人の大富豪の私的なディナーの席上で、当のマダムから「焦らず急げ」の原則を聞いたという。

「時間が貴重なものだからこそ、目標や夢を叶えようとするとき、絶対に焦ってはいけない。悠然としていなければいけないんです。そこでマダムがすごく気を付けているのは、急いで行動に移す際、“焦る”という心理状態にならないようにすること。どんなピンチのときも常に“焦らず、急げ”と自分に言い聞かせるそうです」(ユエン氏)

同じ一時間でも焦り、怒る一時間と、冷静で落ち着いた判断のできる状態の一時間とでは、その人にとっての長さ、密度、意義がまったく違ってくる。

「自分の心理状態と時間は連動します。楽しい、やる気になっているいい心理状態にあると、深く集中できるので逆にゆっくり感じる。逆に、やるべきことが山積していると、焦りだけが先行してあっという間に時間が経つ」(同)

焦るときの主体は時間。急ぐときの主体は自分である。自分の心理状態をうまくコントロールし、その結果として時間を有意義に使い倒すのだ。

「濃密で意義ある時間を保つには集中力が最も重要だとわかっていますし、その間にネガティブな事柄は一切入れません。当然、リスク管理は行います。ネガティブ思考とリスクを考えることとはまったくの別ものです」(同)