余分な水分が、体を冷やす原因に
日本人の死亡原因2位の心筋梗塞と4位の脳梗塞は、ともに血栓症である。だから、「血液をサラサラにするために、毎日水をしっかり飲むように」と西洋医学では指導している。そのせいか、ふだんからペットボトルで水やお茶を持ち歩く人も数多く見かける。
しかし、体にとって大切な水も、とりすぎて排泄がうまくできないと、健康に甚大な被害を及ぼすことになる。漢方でいうところの「水毒」という状態である。
人間は体温で体内のすべての代謝を行ない、生命の灯を燃やしている。だから、体内の水がうまく排泄されず体温が低下する(冷える)と、生命と健康に重大な障害をもたらすことになる。その体温が、現代人は50年前にくらべて約1度低下している。
外傷を負わなくても冬山で凍死することがある。また一日のうちで、体温や気温が一番低くなる午前3~5時に、一番多く人が死ぬ。このように、人間は冷えると死ぬことさえもあるのだ。
人間は冷えると、冷えの一因となる余分な水分を体外に捨てることによって、体を温めようとするメカニズムが働く。「寝冷えすると下痢する」「冷えて風邪をひくと鼻水、くしゃみが出る」「偏頭痛もちの人が、嘔吐して(胃液という水分を捨てて)体を温め、痛みから逃れようとする」「病気をすると寝汗をかいて水分を捨て、体を温めて病気と闘おうとする」「もともと体温の低い老人が病気が悪化するのを防ぐために、夜間頻尿を呈して余分な水分を捨てて体を温める」……。このどれもが、余分な水分を捨てて、体を冷えから守ろうとする現象である。
生命にとって空気の次に大切な「水」も飲みすぎると「冷え」や「痛み」をはじめ、種々の害をもたらすから、このような「水の排泄現象」が起こるのである。
※本連載は『なぜ、「おなかをすかせる」と病気にならないのか?』(石原結實 著)からの抜粋です。
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