しかし怒ることにも理由があるとわかって、苦手意識が尊敬に変わった人もいる。ユキさん(27歳)は、今は転職したが、前に勤めていたIT企業では女性管理職が多かった。26歳で10人の部下をもつ女性上司は、部下のミスを指摘し、人前で怒る人だった。まだ新人だったユキさんはその上司と働くことがつらくて、表情が見えないようマスクをかけて出社していた時期があったと言う。しかし本当につぶれそうになったとき、タイミングよく声をかけて、悩みを聞いてくれた。

新人に厳しく接するのは「期待しているからだよ」と言ってくれた。新人を怒ることで、2~3年目を発奮させるという意図もあると。「部下をちゃんと人として、細かく見ている」と逆に彼女を尊敬するようになった。転職した今でも、メンターとして相談することもあるし、プライベートで会う仲だ。

女性上司でステキだと思うのは、「穏やか」な人だと前述のトオルさんは言う。

「いい女性上司の共通点は、ヒステリーではなく、穏やかで、仕事ができるということに尽きると思います。うちはキャリアビルドしてから40代で出産する人が多いんですが、その中の一人に、みんなに好かれて、キレイで、完璧な人がいます。毎日夕方5時に帰っても仕事のパフォーマンスは落ちないし手も抜かない。接待で遅くなっても、翌朝は子供のために6時起きだそうです」

男性上司にも、ヒスを起こして机をバンバン叩くタイプがいるが、女性のほうが「ヒステリー」と思われることが多いようだ。

ある女性管理職は「感情的だと思われないように、必要以上に淡々と、感情を抑えて話すよう心がけた」と言っていたが、「女性は感情的」というバイアスをさけるため、これも戦略のひとつだろう。

実力で出世していない、ヒステリー、女を前面に押し出して甘える、悪口を言うなどが「悪い女性上司」の共通点として挙がり、その反対に位置するのが「いい女性上司」だ。穏やかで、愚痴や悪口を言わない。実力で出世しているので、媚を売らない。部下を人として見て、細かく目を配る。そして女性ならではのアドバイスができる。