大阪R&Dセンターが入っている心斎橋のビル。来年中には100名体制に。

折しもアイリスオーヤマでは、12年11月に発売を開始した「2口IHクッキングヒーター」が累計販売台数約25万台という大ヒットへの兆しを見せ始めたところであり、事業の拡大に向けて犬飼の設計の能力が買われたのだ。大阪勤務での採用とはいえ、中途社員は全員、入社してから3カ月間、実質的な本社機能がある宮城県の角田ITP(インダストリアル・テクノ・パーク)で研修を受ける。そして、7月に大阪へ戻った犬飼だったが、大連への出張が矢継ぎ早に入ったのだ。

いま犬飼が働いている「大阪R&Dセンター」の設立を発案したのが、研究開発本部長を兼務する常務の大山繁生で、その経緯を次のように語る。

「12年の夏ごろにシャープやパナソニックなど関西に拠点のある大手電機メーカーが相次いでリストラ策を発表し、優秀な技術者が大勢職を失うことが予想されました。それなら当社に招いて、能力を発揮してもらおうと考えたのです。でも、勤務地が宮城だと生活の拠点のある関西から遠く離れてしまいます。だったら関西にR&Dセンターを造ろうとなったわけです」

当初、兵庫の三田工場に併設する計画だった。しかし、その話を聞いた兄でもある社長の大山健太郎から「あかん。それは中途半端やで」といわれてしまう。13年5月の開設のときこそ、梅田にある賃貸ビルでのスタートだったが、同年11月に心斎橋にある地上9階・地下2階のビルを購入。その後、徐々に移転を進め、14年8月から自社ビルで本格的に稼働を開始した。当初、17名だったスタッフは、いまでは30名ほどに。来年中には100名体制にしたい考えだ。