角田ITPにあるショールームに入ると、ホームセンターに来たような錯覚に襲われる。掃除機(上)の改良では、いまも消費者目線での議論が戦わされている。また、ノンフライ熱風オーブン(下)では西谷久弘のアイデアが活かされ、ヒットにつながった。

そして犬飼と同様、西谷は角田ITPでの研修に入る。ただし、その研修内容はよくある座学や、手取り足取り教えるOJTではなく、進行中の商品開発のプロジェクトに責任を持って携わるもの。この変わった研修システムが中途社員を活用する一つのポイントで、その狙いを大山が説明する。

「以前はOJTによる“ソフトランディング”の研修を行っていた時期もあります。しかし、実際に担当商品を持って仕事をしながら、当社の開発の仕組みを勉強してもらったほうが、結局は早く身に付くことがわかりました。“ハードランディング”のようにも思えますが、一人ひとりの真の力量を的確に掴めます。それと中途社員本人も、当社で仕事を続けていけるかどうか、早い段階で見極めを付けられます」

つまり、双方にメリットの大きいシステムなのだ。いくら面接をしても、互いの相性は実際に働いてみないとわからない。これまで採用した大阪R&Dセンターの中途社員の離職率は15%ほど。大山は「採用基準が緩すぎず、また厳しすぎないことの表れで、適正な水準だと見ています」という。

そして、西谷が研修期間中から携わったプロジェクトが、油を使わずにヘルシーな揚げ物料理ができる「ノンフライ熱風オーブン」。フライヤーにオーブン・トースター機能を搭載するのは業界初の試みで、構造上どうしても風を送る穴を上に開ける必要があった。しかし、それではパンやピザを焼けなかったのだが、西谷の発案で反射板を取り付け、見事に解決。14年4月に発売を開始してからの販売実績が約4万台というヒットを飛ばしている。

(宇佐見利明、加々美義人=撮影 )
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