大手ではありえない商品開発の発想
アイリスオーヤマという名前を聞いて、どのような会社をイメージするだろう。同社が開発してきた商品は、クリア収納ケースといった日用品から、犬舎、ネコトイレなどのペット用品、さらには空気清浄器やマスク、米まで幅広い分野に及ぶ。角田ITP内に設けられたショールームに一歩足を踏み入れると、ホームセンターに来たかのような錯覚に襲われる。
13年度のグループ全体の売上高は2672億円で、10年前の03年の1335億円と比べると2.0倍の規模(グラフ参照)。その急成長の原動力となっているのが、続々と市場へ投入される新商品だ。経営目標の一つには「売上高に占める新商品の売上げ比率60%以上(13年度実績56%)」が掲げられている(注)。1年間に投入される新商品の数たるや、1000アイテム以上になるという。
そして、09年から力を入れ始めたのが、サイクロンクリーナー、IHクッキングヒーターといった家電分野である。その商品開発に当たって貫かれているアイリスオーヤマの“流儀”について常務の大山は、「暮らしのなかに潜む問題点を解決する商品を提供すること。しかも、ユーザーが手に取りやすい値ごろな価格で提供することです」と説明してくれた。
先の2口IHクッキングヒーターの画期的な点は、100ボルトの電源でも使えること。それまでの2口タイプの機種は200ボルトの電源が必要で、通常100ボルトの電源しかない一般家庭で使おうとすると、配線工事などで数万円から十数万円の費用が別途かかってくる。そこで、片方をハイパワーにすると、もう片方が火力を自動的に調整し、工事をせずとも利用できるようにした。しかも、安価な機種だと2万6500円の参考価格で。
「三洋電機でしたら、この発想はしなかったでしょう。2つともハイパワーでなければという固定観念にとらわれていたからです。初めて目にしたときは、目から鱗が落ちる思いでした」
犬飼の素直な感想だ。その犬飼をはじめとする大阪R&Dセンターの中途社員には、持ち前の技術や知識をフルに活かした、家電分野における画期的な商品の開発が期待されている。大山は「10%のシェアを取る商品を開発してもらうことが目標です」と語る。
(注)新商品は発売から3年以内のもの