委託賃加工の企業体質を変える

私がセーレンの社長に就任したのは1987年でした。社長就任までの経緯は前回(http://president.jp/articles/-/14296)の連載でお伝えしましたが、当時は繊維不況のあおりを受け、会社は14年間連続の赤字経営を余儀なくされていました。それまでのセーレンは、繊維メーカーから預かった生地を、言われたとおりの色や柄に染めて戻すだけの委託賃加工業。その企業体質から抜け出し、自分たちの製品を企画開発、販売して利益を生み出す企業に変わらなければ、会社の存続はないと思いました。

まず取り組んだのは、「ビジネスモデルの転換」です。繊維産業は製糸、織や編み、染色加工、縫製など製造プロセスごとに分断されているため、トータルで品質コントロールができないことが最大の課題でした。問題が発生しても、その原因を突きとめることが難しいばかりか、力の弱い染色加工メーカーにその責任が押しつけられてしまいます。糸から縫製まで一貫した生産体制が不可欠だと考え、製造工程の内製化を進めていきました。