大企業はその後の転職にも有利
リーマンショックの後、「就職氷河期と言われていても、学生の大企業志向は変わらないのか」。よく中小企業の社長が嘆いていました。
しかしながら、学生の判断は間違っていないのではないかと思います。賃金水準が企業規模によって決定的に異なるということもありますが、理由はそれだけではありません。よく大企業は会社の歯車になるだけで、仕事のやりがいでは中小企業の方が勝っている、という人があります。
はたして、そうでしょうか。
転職情報サービス「DODA(デューダ)」が2011年3月に発表した調査によると、社員の仕事満足度と企業規模には、ほとんど相関関係が見られませんでした。
中小企業の場合、希望の職種に就ける可能性は高い反面、その仕事が合わなければ、職種転換や職場異動などは難しいといえます。逆に大企業の場合は、仕事内容が多種多様ですので、クリエイティブで創造的な職種もあれば、単純作業に近い業務も存在します。マニュアル化や機械化が進んでいる分、定型業務については、個人の判断余地が少なく面白みを感じないかもしれません。いずれにせよ、仕事のやりがいという意味では、企業規模では判断できないということになるでしょう。
一方、新卒で入社した会社に一生勤め上げる、という就業モデルは過去のものになりました。おそらく、今の20代においては、定年まで1つの会社で勤務する人は、少数派になるのではないでしょうか。
ということは、就職先を決める際、その会社の良し悪しに加え、「転職のしやすさ」という観点も持たなければなりません。良いと思って入社しても、ミスマッチは必ず発生するからです。その意味でも、中小企業より大企業の方が優れているといえるでしょう。
大企業の社員が中小企業に転職することは可能でも、実態として中小企業の社員が大企業に転職することは極めて難しいからです。もちろん、「大企業出身者は使いものにならない」と言い切る中小企業経営者も存在することは確かです。しかしながら一方で、大企業で経験したノウハウを自社で活かしてほしい、と考える経営者も少なくありません。
もちろん、働く人にとって中小企業ならではのメリットもあります。転勤が少ない、職種転換が少ない。すなわち、希望する勤務地や職種で働ける可能性が高いということです。「九州でITエンジニアになりたい」「地元に帰って営業の仕事がしたい」といった志向の持ち主には、中小企業は適しているといえます。
ただし、もしそのような職業に対するこだわりが固まっていないのであれば、最初の就職先として大企業を選ぶこと自体は、その後の長い社会人生活を考えれば、無難な選択といえるでしょう。