・「心を使う」部下と信頼を築こう
社員が会社を去る大きな理由は、上司が自らのキャリア開発に本気で取り組んでくれていると感じられないからだ。
急成長を遂げているある金融会社のCFOが、社員の能力開発を手助けすることが社員の辞職防止にどれほど効果があるか実感した事例がある。
同社の会計監査官が、クライアントのGMから信頼を勝ち取る手助けをしたときだ。GMのほとんどは我が強く、仲間ではないと感じた人間には、感情を踏みにじるような扱いをする傾向があった。
監査官との定期的なミーティングの際に、CFOは、「GMたちはあなたをパートナーとして扱っていないと思う」と、共感する発言をした。その言葉で監査官はCFOを信頼し、自分はのけ者にされていると感じると打ち明けた。さらに自分の目標は、GMたちに真のパートナーと認められ、財務に関するアドバイスを求められるようになることだと語ったのだ。
そこで、CFOは彼女が信用を得るためのプラン作成の手助けをし、定期的に彼女と会って進捗状況を確認した。その後、最も扱いにくいGMが彼女の意見を求めてくるようになった。後に、彼女はCFOに、実は辞職しようと思っていたが、CFOが積極的に手助けする姿勢を見せてくれたことで、頑張ろうという気になったと打ち明けたのだ。
社員はリーダーとの関わりを強く求めている。そのために上司がすべきことの一つは、毎週、社員がうまくやったことや改善の余地がある点について簡単に言葉を交わす時間をつくることだ。ざっくばらんな会話を続ければ、信頼関係が生まれ、社員は自分の強みや弱み、情熱や目標について率直に語ってくれるようになる。そうなれば、上司と部下が協力して、プランを立てることができる。
社員と能力開発について話し合う定期的な機会を設けることも必要だ。「上司はいつでも話を聴いてくれ、自分の能力開発を真剣に考えてくれていると信じていれば、部下がキャリアについての考えや研修のニーズを打ち明ける可能性が高くなる」とカバラロは言う。