妻子を養う身では、とても足りない。失業した場合に備える民間の保険はないのだろうか。すぐに浮かぶのが損害保険会社の「所得補償保険」と生命保険会社が販売する「就業不能保険」である。保険会社によって多少の差はあるものの「所得補償保険」の保険期間は原則1年で、填補期間も1年。「就業不能保険」は保険期間も保障期間も65歳、70歳などと長い。ただ気になるのはどちらも「保険金や給付金が支払われる条件が厳しい」(ファイナンシャル・プランナー深野康彦氏)こと。病気(精神障害は対象外のことがある)やけがで就業不能状態になることが条件だが、就業不能とは通常、医師の指導によって入院治療や在宅療養をしていて少なくとも6カ月以上、いかなる職業においてもまったく就業ができない状態のことを指す。

どちらも失業には対応していないので、加入を考えているのなら保険金が受け取れる条件を慎重に検討する必要があるが、ファイナンシャル・プランナー藤川太氏は「早期退職して自営業者になるのであれば所得補償保険を考えてもいい」と言う。健康保険の傷病手当金がもらえる会社員時代と異なり、自営業者は万が一の備えが手薄になるからだ。

30年後も通用するキャリアを磨く

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図1 定年延長できる企業は5割弱/図2 大企業で70歳以上まで残れる人は10分の1

結局、会社員が失業に備える保険は雇用保険しかないと心得て、「国や会社におんぶに抱っこの時代は終わったと肝に銘じ、キャリアの展望をしっかり考えておかなければなりません」(ブレインコンサルティングオフィス 北村庄吾氏)。図1、2のように定年後も働ける企業が増えてはきたが、まだ5割以下。30年後、定年後の継続が決まったからといって安心はできない。北村氏によるとすでに大手企業でも継続雇用者に支払う賃金の削減を図っていて「できれば最低賃金(東京都では時給869円)で働いてもらいたいと考えている企業も少なくない」。

30年後も「残ってほしい」と会社側に言わせる実力を身に付ける努力こそが最良の保険である。

深野康彦(ふかの・やすひこ)
ファイナンシャルリサーチ代表。1962年生まれ。完全独立系ファイナンシャル・プランナーとして個人のコンサルティングを行いながら、さまざまなメディアを通じて情報を発信している。

藤川 太
(ふじかわ・ふとし)
家計の見直し相談センター代表。1968年生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科修了後、自動車会社を経てファイナンシャル・プランナーに。

北村庄吾
(きたむら・しょうご)
社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー。1961年生まれ。中央大学法学部卒業。91年、法律系国家資格者の総合事務所BraiNを設立。年金問題に詳しい。
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