もしこうした「地域包括ケアシステム」が機能しなかった場合は「子供が親の面倒を見ることになりますが、自分たちの仕事が犠牲になるなど、自ずと限界がくる。かといって放って置いたのでは自宅で孤独死しかねない」と法政大学経済学部准教授の小黒一正氏は警告する。だが「地域包括ケアシステム」をつくる財源はあるのだろうか。
小黒氏は「やや極論だが」と前置きして「絞り出すことができる」という。現在、年金給付総額が年間約50兆円。この1%を削減するだけで年間5000億円が調達でき、10年間で約5兆円の財源が確保できるという計算だ。小黒氏が想定するのは、100%公費で建設する高齢者向け住宅が集まるコンパクト・シティ。住宅地を中心に徒歩30分圏内に病院や介護施設はもちろん、シネマ・コンプレックスや大型書店、ショッピング・モールなどを置く。それを老人の街と呼んでしまうとイメージが悪いが、高齢者が日々の生活を満喫できる街であれば、住みたくはならないか。
国は介護に関して大きな方向性を示しているが、個人で備えることはできるのだろうか。公的な仕組みには00年から導入された介護保険制度がある。介護保険は40歳から強制加入させられる。40歳から64歳までの加入者を第2号被保険者と呼び、会社員では健康保険料と同じく報酬に比例した額となり、保険料は事業者と被保険者で折半する。65歳以上は第1号被保険者と呼び、所得に応じた保険料が年金から天引きされる。月額保険料は4972円(12~14年の全国平均)。介護保険給付費は国と都道府県、市町村で50%、第1号と第2号で50%を負担しており、そのうち第1号の負担は21%に相当する。
介護を受ける場合の介護費自己負担は1割である。ただ厚労省は14年の通常国会に介護保険法改正案を提出する予定で、15年度から高所得層の自己負担を2割に引き上げる構えだ。