なぜ黙ってるのか→ダメ出しの理由を考えている

インテグラル パートナー 辺見芳弘氏

ほぼ徹夜で準備したレポート。会心の作だったと思うのだがなぜか上司は言葉を発しない。え、もしかして何かまずいことを書きましたか?

秋山氏によれば、部下からの報告や提案を受けて上司が黙り込んでいるときは、基本的にプラス評価ではないという。逆鱗に触れたというわけではなく、どう反応すべきか困っているのだ。

「これじゃダメ! と書類をバーンと投げ返しちゃうわけにはなかなかいきません。上司は部下のモチベーションを維持しなければならない。どういうふうに話して、このダメな人をリカバリーしようか、この場をどうやっていい方向に持っていこうか。自分の中で一生懸命に考えるうちに時間が経ってしまいます」

部下の仕事内容が一定水準に達していて、上司に明確な改善策がある場合は簡単だ。しかるべきタイミングで「今回こういう話だけど、ここは全然わからない。こうやってこうしよう」と切り出せる。

しかし、レベルの低さが上司の想定範囲を超えている場合、いったいどこから手をつけていいかわからず途方に暮れてしまうのだ。

少し余談になるが、バシッとダメ出しをされたときは2つの可能性がある。

(1)上司が自分を完全に見放して切り捨てにかかっている。
(2)上司が「自分と信頼関係を築けていて、打たれ強い人」だと評価している。

もしかすると(1)かもしれないけれど(2)だと信じて「どのへんがダメですか?」と食いついていくしかない。

さらに余談になるが、秋山氏は30代の頃は(1)も(2)もなく、ただ感情的にダメ出しをしまくっていたという。

「いいことは何もないですよね。僕の部下の多くは年上だったので、年下の人間から『全然ダメ!』と頭ごなしに言われたら誰でも腹が立つじゃないですか。『なんだ、この若造』と。感情をのみ込めるようになったのはここ数年ですよ」

上司が黙っているのが会議中ならば話は別だ。辺見氏は、部下を信頼して自立を促している可能性があるという。

「企業再生途上にある会社では、強固なコミュニケーション力を持つ強いチームをつくるのが重要な経営テーマになります。そのためにはまず会議をします。ところが、意見を交換し合う文化のなかった企業だと、初めは僕しかしゃべらないですよ。それを、だんだんみんなが発言するように持っていくのです」

上司からすれば黙っている部下も問題なのだ。どんな意見やアイデアを持っているのか。話さなければわからない。

「発言者を指名したり、データなど話すきっかけになる材料を準備するなど、言いやすい環境を整えてあげると、やがて部下たちは話すようにはなります。ただ今度は、話してみたもののプレゼンテーションが下手で、みんなにうまく伝わらないといった問題が起きてくる。そうしたら今度はプレゼン講習を受けさせるなどして、みんなに学んでもらいます」

少しずつ成果が出てきたら、会議に出席はするが口は開かないようにするという。いずれは自分抜きで会社をうまく回せるようになってほしいからだ。

「マジックミラー越しに会議の様子を見ていたいと思う時期があり、部下たちが成長してその時期を過ぎると、会議自体に出なくなります。会議の場で僕がしゃべらなくなったら、『すべてを自分で考えてみろ』という意味ですね」

つまり、信頼を勝ち取ったからこそ、黙っていると受け止めていいのだ。

アドバンテッジ リスク マネジメント社長 鳥越 慎二(とりごえ・しんじ)
1962年生まれ。東京大学経済学部卒業後、86年ベイン・アンド・カンパニー入社。ノースウエスタン大学にてMBA取得。アドバンテッジ インシュアランス サービス社長などを経て、99年より現職。著書に『就業不能―「働けないリスク」に企業はどう向き合うか』。

柏市長 秋山 浩保
(あきやま・ひろやす)
1968年生まれ。筑波大学第三学群国際関係学類卒業後、ベイン・アンド・カンパニー入社。フォーシーズ常務を務めた後、経営コンサルタントとして様々な会社の役員を歴任。2009年より現職。

インテグラル パートナー 辺見 芳弘
(へんみ・よしひろ)
1957年生まれ。慶應大学商学部卒業後、ハーバード大学MBA取得。90年BCG入社。BCGパートナー、アディダスジャパン副社長、東ハト社長を歴任、2007年より現職。著書に『「擦り合わせ」思考力』。
(的野弘路、関根統=撮影 PIXTA=写真)
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