生活習慣の改善で症状が治まる人も
そう話すA子さんが病院へ行き「胃食道逆流症」と診断されたのは、最初にそういった症状が出てから約10年後のことだった。A子さんの場合、食道が胃酸で変化し、「バレット食道」と呼ばれる状態になっていた。
食道はもともと「扁平上皮」と呼ばれる粘膜で覆われている。バレッド食道とは、何度も胃酸の逆流を繰り返すうちに、食道の粘膜が胃と同じ「円柱上皮」に変化すること。そこまで進む人は今のところ日本人には少ないが、バレッド食道になると食道がんになるリスクが20~30倍に高くなる。ちなみに、A子さんはメタボ体型ではなくスリムな女性だ。
胃食道逆流症の治療には、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)の服用が有効である。市販のH2ブロッカーで症状が改善すればいいが、H2ブロッカーはPPIに比べて日中の胃酸を抑える力が弱い。市販薬でよくならない場合には、消化器内科のある医療機関を受診してみよう。
また、脂肪分の多い食事、暴飲暴食、早食いをやめ、就寝前3時間は食べないようにするなど、生活習慣を改善しただけで症状がほとんどなくなる人もいる。便秘だと胃が圧迫されて胃酸の逆流が起きやすいので便秘を解消し、知覚過敏にならないようストレスと上手に付き合うことも大切だ。かなり稀だが、PPIが効かず、食道の筋肉が厚くなって食道運動異常が起きているようなら手術が有効な場合もある。
この病気が増えているのは、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の保菌者が減少していることも一因といわれる。ピロリ菌が胃の粘膜にすみつくと慢性胃炎や萎縮性胃炎が起こって胃酸の分泌量が減るため、胃食道逆流症は起こりにくくなるからだ。ピロリ菌陰性の人は、陽性の人に比べて、胃食道逆流症の発症率が2~5倍高いという。
40代以下の人はピロリ菌の保菌率が低く、胃酸の分泌を促すスナック菓子やファストフードを子供のときから大量に食べている人が多いのでなおさら胃食道逆流症になりやすい。ピロリ菌の除菌をした人は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんになるリスクは下がるが、胃食道逆流症を発症しやすくなるので注意しよう。