『聞く力』の阿川佐和子さんはシャワーで発想
一方、プレジデント誌好評連載の脳科学者・茂木健一郎氏は、9月下旬に開かれたPRESIDENT創刊50周年記念フォーラムで、『聞く力』でおなじみのエッセイスト・阿川佐和子さんと対談した際、素晴らしいアイデアを発想するときの脳機能に関して解説した。
原稿が書けなくなったときなど壁にぶつかったときにシャワーを浴びると事態が打開される、と話す阿川さんに対し、茂木氏は賞賛の声を送った。
「さすが、阿川さんです。シャワーを浴びて軽くお湯の刺激を受けたり、散歩して風を感じたり流れる風景を楽しんだりといった適度な“感覚入力”はあるけれど、それに注意を向ける必要がないような状態。これが、脳のディフォルト・モード・ネットワーク(DMN)という機能(空想や記憶の想起、自己モニタリングなどの内的思考)をよりアイドリングさせる(働かせる)んですよ。そのことでいいアイデアが生まれることがあります。DMNが活性化するには適した環境があり、ランニングしたり、無音で情報が入ってこない個室にいたりすると、かえってうまく働きません」
入浴中やシャワー中にぼんやりしていたら、ひらめいたという人は数多いが、実はそれは脳機能的にも理にかなった現象だったのである。
少しざわついた雰囲気の街のカフェ・喫茶店やファミリーレストランのほうが集中したり、ひらめいたりするという人が少なくないのも、この“シャワー理論”に似ているのかもしれない。
「書店もカフェもほどよいノイズがあったほうがかえって落ち着き、思考に没頭できるような気がします」(前出・嶋氏)
また、パワースポットではないが、茂木氏の話に出てきた散歩することも、アイデアを生み出す装置といえるだろう。
脳神経外科医の築山節氏はプレジデント誌9月2日号で、歩くことで脳の血流が大幅にアップし、頭が高速回転すると語っている。
「手足の動きを司る領域は脳の上部に位置しています。特に、(散歩で使う)足を支配するのは、頭頂部。歩くとこの部位の血流が増え、足が受けた外界からの刺激も脳にフィードバックされます。脳が必要とする酸素やブドウ糖を多量に含んだ血液が頭頂部にまでくみ上げられ、脳全体に降り注ぐのです」(築山氏)
健康のための義務ではなく、ぶらぶらと歩く。いつもと違う景色の散歩道を行けば、脳にほどよい刺激があり、ひらめき力アップの可能性もあるのだ。