「いろいろな情報・知識を仕込んで考え続けるとふっと浮かびます。でも、いいアイデアほど“揮発性”が高いものです。だから、いつでも書き留められるよう、私は家の各所にメモ用紙を準備してあります」(多喜氏)
つまり、ただ単に“三上”の状態に身を置けばいいのではなく、上質のアウトプットのために、常に情報収集し、それらをしっかり消化して、24時間考え続ける気概のなかでこそ、凡人が思い浮かばないアイデアが“自己組織化”される(ひらめく)のかもしれない。
クリエーティブディレクターの嶋浩一郎氏があげるアイデアの“パワースポット”は書店だ。
「ふらりと立ち寄った書店で本や雑誌を眺めるうちにアイデアが湧き上がってくることがあります。それは、視界のなかに恋愛・環境・老後・哲学・料理など、この世の森羅万象の濃厚な情報が勝手に飛び込んでくるから起きる現象でしょう。自分のなかでそうした“異物”同士が組み合わさって化学反応し、新しい何かが生まれる。
書店は、家電のビックカメラと衣料品のユニクロが合体してビックロができたように、想定外のものを掛け合わせたり組み合わせたりして思考するのにうってつけの場所だと思います」
ヤフーやグーグルの急上昇検索ワードが「とりあえず知っておきたい」情報だとすれば、書店で平積みされた本は世の中の多くの人が「深く知りたいと思っている」情報だと嶋氏は語る。