繊維事業を源流に持つ非財閥系商社の雄は、今や業績が絶好調である。「非資源ナンバー1」を掲げながら、リスクとポテンシャルを冷静に見分け、数字の達成にこだわる岡藤経営はどこから来ているか、徹底調査した。

※第1回はこちら(http://president.jp/articles/-/14090)

客の立場に立って考え抜いた経験

伊藤忠商事 繊維カンパニー プレジデント 岡本均氏

1858年の創業以来、伊藤忠の代名詞であり、屋台骨を支え続けてきた繊維事業。現在その繊維カンパニーを率いる岡本均(専務執行役員)には忘れられない体験がある。岡藤というカリスマの伝説話は、岡本にも伝わってきていた。まだ岡本が部長になったばかりの頃、大阪本社での決算会議に出席していたときのことだ。季節は夏。

岡藤が社長になって以来、予算会議では厳しいハードルが課せられる。毎月、繊維部門ではその数字を達成するための進捗状況が細部にわたって詰められる。それでも、どうしても下方修正せざるをえない局面は出てくる。

岡本はそうした局面に追い込まれて、決算会議に臨んだ。岡藤から烈火の如く落とされるカミナリを想像すると身の置き所がなかった。岡藤が座る席の後ろの窓から入道雲が湧き上がり、空は一気に暗くなる。俺の所でカミナリ落ちるかな? と思うと心が沈んだ。だが、カミナリが落とされたのは、岡本の次に報告した部長だった。

岡藤の数字への厳しさは徹底している。寝る前に決算の数字を確認、朝起きて再び確認するほどで、曖昧さは許されない。さらに岡本を驚かせたのは、交渉が困難に陥ったとき、予算達成が困難なときに岡藤が出す指示の的確さである。細部までここまで考えているのかと。