手帳に書き込むと臨時支出が予定支出になる
しかしながら「予定」しておくと、その準備をしておかなければならない。その心理的な負荷が意外にクセモノだ。家族旅行の行き方でそうしたネガティブな心理メカニズムを考えてみよう。
まず、1カ月後に家族旅行に行くと決断した人の場合。仕事の休みの段取りに始まり、チケットの手配やホテルの予約などを事前に行わければならない。ところが、あろうことか、ホテルの予約を忘れたらどうなるだろう? アーリーチェックインしてゆったり過ごすつもりだったのに……と罪悪感にさいなまれたり、「しまった!」と焦ったり。家族からは「どうして早くから予約してくれなかったの!?」などと責められたり、怒りをぶつけられたりするかもしれない。
一方、直前に思い立って旅行に行こう思った人の場合はどうだろうか。「ホテルでゆったり過ごせたらいいよね」と期待に胸を膨らませて探した結果が満室だったとしても、罪悪感に襲われたり、責められたりするだろうか? きっと「まぁ、急だから仕方ないよ」と自分も家族も納得するかもしれない。
これと同じような心理メカニズムが家計でも発生する。
あらかじめわかっている「予定支出」となると、それなりに計画して貯蓄をしておく義務が生じる。そして、それが計画どおりにできなかったら、人は当然、その原因を見つけようとするし、原因がわかれば責めたくなることもあるだろう。
でも、「臨時支出」なら「急だから仕方ない」と誰も悪くないと思うことができる。責任を回避できる。悪いのは、計画的に準備をしなかった自分ではないと思えるのだ。
このスパイラルに陥ると、後ろめたい気持ちを持たずにすむが、貯蓄力はちっとも上がらない。では、どうすればいいか? 支出に心を振り回されないための解決法は、家計の支出を「年単位」で考えることだ。
あなたのスケジュール帳には、仕事の予定は書いてあると思うが、プライベートでの支出予定は書いてあるだろうか?
1年間を見通した支出の予定をカレンダーや手帳に書き込んだ瞬間、臨時支出は「予定支出」に切り替わる。意識して書いたことは頭に残っているし、たとえ忘れてもカレンダーや手帳を見れば思い出すことができる。意識するだけで、お金の使いかたや貯め方が変わるので、まずは、「予定支出」の書き込みから実践して頂きたい。
なお、妻が訴える特別支出には、「お小遣いが足りないと言ってもらいにくる夫への臨時支出」もある。毎月のお小遣い支出を増やすことが難しい家計(夫婦関係?)も多いので、その場合は、「ボーナスの10%」というようにルールを決め、あえて「お小遣いの臨時支出枠」をつくっておこう。
夫婦で「お小遣いの臨時支出枠」を決めた場合は、決してそれ以上お小遣いを増やさないことだ。また、このルールは妻が心の中で決めておいて、夫には内緒でも構わない。夫に言わなくても、支出する現実は同じでも、夫がお小遣いをもらいにくることを見越して予定支出の枠を作っておいた分、気持ちの負担は軽くなるし、家計管理もやりやすくなる。
臨時支出を予定支出に変えて、楽しくお金が使えるようになってほしい。