子供が使うとかわいい、大人が使うと格好いい

徳島県大谷焼や愛媛県砥部(とべ)焼あるいは石川県山中漆器の職人が丹精を込めて作った「こぼしにくい器」(3500円~)は予約注文状態だ。この器は、内側に微妙な返しが付いており、スプーンですくうとき、食べ物がのりやすいため、こぼしにくい。

職人が作る「こぼしにくい食器」。

同様に人気商品の「こぼしにくいコップ」は福岡県小石原焼が4500円、青森県津軽塗りは1万2600円だが、共に予約販売となっている。このコップは、取っ手はないが、2~3歳の子供が両手で持ちやすい大きさで、表面に段差を作ってあるので、指の引っかかりがよく、落としにくい。和えるの商品は丁寧に作ってあるだけではなく、子供が自然に使いやすい機能性を重視している。

「大人でも器からの最後のひとすくいは苦労します。小さな子には、こぼさずにすくうことは簡単ではありません。だから、子供が自分の力ですくえるような機能をさりげなく盛り込みたいと思っていました」

乳幼児用品では機能が露骨に見えるものも少なくないが、それでは美しくない。矢島が「子供が使うとかわいい、大人が使うと格好いい」と言うように、大人になっても使えるデザインを施している。一生ものと思えば、安いものだ。そのデザイン性の高さから出産祝いセットはキッズデザイン協議会主催第6回(2012年度)キッズデザイン賞『審査委員長特別賞』を受賞、こぼしにくい器は2013年度グッドデザイン賞を受賞した。そして、先日、こぼしにくいコップも2014年度グッドデザイン賞を受賞した。

販売ルートは、オンラインショップや実店舗では、伊勢丹新宿店や日本橋三越、西宮阪急など全国5カ所の百貨店で取り扱っている。

和えるの人気を聞きつけたバイヤーなどからオファーも多いが、矢島はじっくりと構えている。和えるの考え方を理解し、共感してもらえない限りは断ると矢島は言う。中には担当者と何度もやりとりし、矢島も現地を視察し、1年がかりで取引を開始したケースもある。ただ商品を売っているのではなく、日本の伝統と職人のものづくりの背景を伝えたいとの想いからだ。

2014年7月には、JR目黒駅近くに念願の直営店をオープンした。16坪ほどの路面店で、地域の人も含めて想いを共有したいと、日本文化や伝統産業に触れるイベントやワークショップなども定期的に開催している。