平塚エージェンシー所長・武蔵野学院大学客員教授 平塚俊樹氏が添削!
【×BEFORE】
(1)自らの役職を明らかにするのは得策ではない。責任者とわかる肩書だと、顧客の要求がエスカレートする可能性も。
(2)自社の具体的な落ち度を文書に残すべきではない。改善すべき点は、あくまで「顧客の気分を害したこと」という姿勢にとどめる。そうでないと後々訴訟に発展した場合などに不利になりかねない。
(3)関係改善に努めるのはよいが、まずは今回の件を口外させないこと、今後発生する一切の債務・債権を放棄することなどの和解事項を盛り込むべきである。
(4)クレームが暴力を伴ったりストーカーになったりするケースもある。安易に一人で出向く意思を示したり、個人を特定できる情報を表にしたりしないこと。
【○AFTER】
(1)役職などはあえて明かさない――クレーム顧客への対応は、きれいごとのコンプライアンス論だけで済む話ではない。対応者への危害を未然に防ぐため、役職や連絡先など必要以上の個人情報は出さないこと。
(2)具体的に非を認める文言はNG――商品などの具体的な問題点は文書化せず、顧客を不快にさせたことのみについて謝罪する。訴訟時に不利になることは徹底的に回避する。
(3)個人的には「顧客の味方」に――商品を愛用してくれている顧客への謝意を伝え、誠実な対応から逆に顧客を味方につけられるような工夫を凝らす。
(4)和解文書としての確認事項を入れる――今後同じ件で問題が発生しないよう、合意内容を他者へ口外しないことや、債務・債権が残っていないことを確認する文言を必ず盛り込んでおく。
(5)交渉窓口は一本化しておく――これ以上顧客の不信感を増大させないためにも、担当窓口を明示、固定する。担当者間での連絡は密に取ることが重要。直接交渉する際でも、暴力など不測の事態に備えて単独行動は避けるべき。
1968年、東京都生まれ。大学卒業後、大手不動産会社、自動車用品メーカーを経て2004年に独立する。危機管理専門コンサルタントとして企業や法律事務所を指導。著書に『Lawより証拠』『クレームストーカー対策マニュアル』など。